米国の豚肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○肥育豚の価格動向



● 12カ月連続で前年を上回る


 肥育豚価格 (主要5市場の平均価格) は、 94年11月の28ドル/100ポンドを底 に値を上げ始め、 95年6月からは、 前年水準を上回って推移している。 96年に入 ってもこの傾向は変わらず、 4月には91年8月以来初めて50ドルを上回った。 さ らに5月は、 前年同月を54. 7%上回る57. 5ドル (約137円/kg) にまで値を上 げた (暫定値)。

● 背景に生産減と輸出の伸び


 このように価格が堅調である背景としては、 まず、 生産の減少が挙げられる。 枝肉生産量は、 94年の価格低迷を反映して、 95年9月以降、 ほぼ前年を下回って 推移しており、 96年1月から5月までの累計では、 前年同期比1. 9%の減少とな っている。  一方、 需要面の要因としては、 まず輸出の好調さが挙げられる。 96年1月から 3月までの累計では、 日本向け (71. 2%増) などの大幅な伸びにより、 輸出量 は、 前年同期比18. 4%の増加となっている。 日本向けが急増したのは、 品質の 良いチルドへの需要が強いほか、 冷凍品についても、 セーフガードの解除による、 4月からの輸入基準価格の引き下げを見込んだ輸出が増加したためとみられる。

● ベーコン需要の伸びと処理能力の向上も貢献


 これらの要因に加えて、 ファスト・フード業界におけるベーコン需要の増加も、 価格の堅調さに寄与しているものと考えられる。 このところ、 米国のファスト・ フード業界では、 ベーコンを利用したハンバーガーやサンドウィッチが人気メニ ューになっており、 ベーコンに対する引き合いがかなり強くなっている。 このた め、 主な原料であるベリー (ばら部分肉) の価格は堅調に推移しており、 96年5 月の卸売価格 (米国中央部、 12〜14ポンドのもの) は、 前年同月と比べて150% 高と大幅な値上がりを記録した。  なお、 ベーコンを利用したハンバーガーやサンドウィッチの売り上げ額は、 年 間50億ドル (約5千4百億円) に達するとも言われている。  また、 パッカーが豚の処理能力を向上させたことで、 肥育豚に対する需要が高 まったことも、 要因の一つとみられている。 全米豚肉生産者協議会 (NPPC) の報 告によれば、 95年2月からの1年間に、 全米の豚の処理可能頭数は、 約5% (約 2万頭/日) の増加となった。

● 生産コストの上昇を上回る価格水準


 米国農務省 (USDA) は、 96年前半の肥育豚価格の値上がりについては、 特に低 コスト生産が可能な生産者にとっては、 飼料価格の上昇に伴う生産コストの上昇 分を上回っていると分析している。  現在、 米国全体では豚肉生産が減少する中にあって、 豚群を拡大させているの は、 ノースカロライナ州などにみられる低コスト生産が可能で、 資金力も有する 大規模養豚である。 肥育豚価格が、 今の水準で推移した場合には、 これらの飼養 規模がさらに拡大し、 同州を始めとする新興生産州の全米における重みがますま す増していくものとみられる。  なお、 USDAの調査では、 96年の養豚経営の純利益 (北中央部の一貫経営、 農機 具費等は除く) は、 5月までの単純平均で8. 64セント/ポンドと、 前年同期の 水準を大幅に上回っている。
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