実用化が進む自動搾乳システム (オランダ)





● 10年以上を経て実用段階へ


 オランダは、 自動搾乳システムの開発の先進国であり、 同国の機械メーカーは、 10年以上も前からこのシステムの研究開発と実用化に取り組んできた。  現在、 実用段階に入っているシステムの一つは、 次の仕組みにより搾乳が行わ れる (このシステムは、 95年現在、 オランダ国内で20台以上が導入されている)。 1) フリーストール牛舎で飼養されている乳牛が搾乳時間になり、 搾乳機に近づ くと、 ゲートが自動的に開いて搾乳ボックス (1〜4頭分) へ誘導される。 2) 搾乳ボックス内のアームに装着された超音波センサーが、 乳頭の位置を探り 当て、 ティートカップ (搾乳器) が自動的に乳頭へ装着される。 3) ティートカップ内で乳頭が洗浄され、 搾乳が開始される。 4) 搾乳終了後、 誘導装置が作動して、 乳牛は、 搾乳ボックスの外へ出る。  なお、 酪農家は、 搾乳中の乳牛の状態を、 モニター画面により常時確認するこ とができる。

● 労働時間の削減や乳量増が可能に


 この自動搾乳システムを利用することによるメリットは、 まず第1に、 搾乳作 業が無人で行えることから、 大幅に労働時間を削減できることである。 それによ り、 酪農家は、 早朝などの搾乳時間の拘束から開放されることになる。  また、 第2に、 1日に3回の搾乳が可能となることにより、 泌乳期前半には、 1日当たりの乳量を (2回の搾乳よりも) 10%以上増やすことができるようにな る。   そして、 第3に、 このシステムが、 乳牛の個体管理システムと連携して実用化 されていることである。 これにより、 搾乳ごとに乳房炎のチェックが行われる他、 乳量などが自動的に記録され、 乳牛の個体管理の一層の向上が図られる。  また、 このシステムを十分に活用すれば、 効率的に能力の高い乳牛の選抜を行 うことができるため、 酪農家は、 経営効率を一層高めることが可能となるメリッ トもある。  まだ、 自動搾乳システムは、 導入費用や機能の改良などの面で課題はあるもの の、 このシステムの完成度が一層高まり、 実用化が順調に進めば、 今までの重労 働や早朝の作業といった、 酪農家のライフスタイルが一変し、 酪農のイメージが 格段に向上する可能性もある。

● 今後は、 総合的な乳牛管理システムの開発へ


 現在、 オランダでは、 官民共同の取り組みにより、 さらに自動給餌システムと も一体となった総合的な乳牛管理システムの開発研究を行っている。 現地では、 この研究の進展に向けて、 自動搾乳システムの進歩、 改良とその一層の普及が望 まれている。
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