ダチョウの飼育にスポットライト (中国)





● 全国の飼育羽数は2万羽以上に


 経済開放政策の波に乗って、 畜産部門でも新しい事業を起こすことが珍しくな くなった中国で、 ダチョウの飼育が次第に注目を集めつつある。 商業的なダチョ ウ飼育に先鞭を付けたのは、 経済発展が一足先に進んだ広東省である。 同省では、 92年に、 アフリカから輸入したダチョウをもとにして、 飼育が始まったとのこと である (なお、 他にも、 それ以前に導入された事例がある模様)。  その後、 ダチョウの飼育は徐々に全国的に拡大し、 現地報道によれば、 最近で は、 全国には、 約200カ所の飼育場があり、 また飼育羽数は2万羽以上の規模と なっているとのことである。 また、 その経営は、 これまでは繁殖中心であったが、 飼養羽数が増えたことから、 今後は肉の供給面でも増加が見込まれている。 なお、 その飼養羽数は、 現在も増え続けているとのことである。

● 現状にマッチしたダチョウの特性


 ダチョウ飼育が拡大した背景には、 その経営上のメリットが、 飼育コスト面と その肉の商品特性の双方で、 大きいことが挙げられると考えられる。 ダチョウは 飼育管理が容易なうえに、 繁殖力が高く、 かつ、 乾燥や高温といった厳しい気候 条件にも適用力が高いことが知られている。 また、 飼料面では、 粗飼料やいわゆ る野菜茎等を中心に、 「粗食に耐える」 ことから、 穀物価格の高騰が続く現状に おいては、 生産コストを低く抑えられるというメリットも大きい。 一方、 肉質の 方は、 高蛋白で低脂肪・低コレステロールと、 現代的な食品志向にマッチしてい るとされる。 また、 その卵も、 年間50〜100個が期待され、 かつ、 長期間にわた って採卵が可能なことから、 販売が軌道に乗れば、 この方面でも収益が期待され る。 中国では、 食材に関し感覚的なタブーが少ないことから、 販売ルートさえ確 立すれば、 将来性は高いと考えられている。

● 穀物節約型畜産を推進する政府も注目


 中国では、 飼料穀物の中心であるトウモロコシについては、 近年の需要急増か ら既に輸入国に転じており、 国内では高値が続いている。 このため、 畜産経営面 だけでなく、 民生上も影響が及ぶことを警戒して中央政府は、 穀物飼料節約型畜 産業の推進に力を入れている。 その中心となる方策は、 作物茎などを家畜飼料と して有効に利用する経営の推進である。 この方策は、 当然にも、 主に牛・羊の飼 育部門向けのものであったが、 ダチョウ飼育は、 これらに続く道の一つであると 考えられる。 中央政府は、 ダチョウの飼育に注目しつつあり、 既に2月には、 中 国ダチョウ繁殖・開発協会が設立されたと伝えられている。

● タイでも国際市場での将来性に注目


 一方、 同じアジアでも、 飼料穀物が不足しているタイで、 ダチョウ飼育への投 資を推奨しているとのニュースがもたらされている。 これは、 先進国を中心に、 コレステロール問題等から牛肉消費が減少気味であることに注目して、 ダチョウ 肉の国際需要が、 将来、 有望である点に着目した動きである。 また、 最近では、 国際的には、 牛海綿状脳症 (BSE) 問題の急拡大に配慮して、 英国航空が機内食 メニューにダチョウ肉料理を加える決定をするなどの追い風がある。 またさらに、 その皮革製品が、 ハンドバッグ等高級雑貨の原料として高価で取り引きされるこ とから、 現地では、 有望肉資源であると共に付加価値商品としての側面からも、 その収益性が期待されている。
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