輸入急増で第1四半期の貿易収支が赤字に (中国)





● 第1四半期は11. 5億ドルの赤字に


 96年第1四半期の通関統計では、 輸出が282. 5億ドルであったのに対して、 輸 入は294億ドルとなり、 貿易収支で見ると、 差し引き、 11. 5億ドル (約1,200億 円) の赤字となった。 高水準の経済成長が続く中国では、 過去2年間は特に輸出 が好調で、 年間の貿易収支は、 94年が53億ドル、 また95年が167億ドルと、 いず れも大幅な黒字となっている。 このことからすると、 96年に入って貿易収支がマ イナスに転じたことは、 一つの転換点であるといえよう。

● 農産物、 穀物輸入増に対し肉類は輸出伸び悩み


 赤字になった原因についてみると、 輸出が前年同期比8. 7%減となったのに対 して、 輸入の方は23. 2%も急増しており、 輸入の急増が赤字の要因となってい る。 輸入では、 依然として旺盛な産業需要を背景に、 工業原料やエネルギー資源 が急増すると共に、 機械類等の資本財輸入の増加も続いている。 農産物部門では、 穀物類 (粉製品を含む) の輸入が224万トンと、 前年同期比で54. 6%も増えてい ることが目立っている。 また、 農業関連資材では、 農業テコ入れが強力に推進さ れる中で、 肥料の輸入が増加している。 これに対して、 農産物の輸出では、 95年 には50%を上回る急増となった鶏肉や豚肉の輸出が、 第1四半期には、 以前ほど は振わなかった (鶏肉‥前年同期比+8%/豚肉‥同−7%) ことが挙げられる。

● 赤字定着化の徴候はみられず


 そうした状況下でも、 当面の対外決済能力を示す外貨準備高の方は、 95年輸出 分の代金決済がずれ込むことから増え続けており、 96年3月末では808億ドル (約8兆5千億円) に達している。 したがって、 その面では、 今のところ問題は 生じていない。  一方、 通商政策面では、 昨年11月のAPEC大阪会議の 「公約」 に従って、 96年4 月1日から約4000品目の関税の大幅な引き下げを実施した。 その結果、 中国の総 平均関税率は、 36%から23%に低下した。 また同時に、 食糧や食用油などの12品 目に関税割当制が適用されることになった。 こうした一連の市場開放措置は、 貿 易相手国からは歓迎されているが、 中国にとっては、 輸入を増やす要素といえよ う。  そうした中、 速報値では、 96年1〜4月の貿易赤字は7億ドルに縮小したと伝 えられている。 したがって、 貿易収支の赤字傾向が定着する兆候は、 今のところ 表れていないといえる。
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