外資参入で乳製品市場の競争が本格化 (ベトナム)





● 国営企業が乳製品市場を独占


 ベトナムでは、 国営企業であるビナミルク (VINAMILK) 社が、 乳製品をほぼ独 占的に生産、 販売してきた。 同社は、 国内の乳製品需要が急増する中で、 生産設 備の拡大を行う一方、 米国や豪州の協力を得て、 生乳生産の拡大にも努力してき た。  ホーチミン市に本社を置く同社は、 すでに国内に4つの乳製品工場を所有 している。 この内、 規模が最も大きいのが約1年前に建設されたハノイ工場で、 同社の生産量の約4割の生産能力を持つ。 同社の外事課によりと、 95年の同社の 乳製品生産量は、 加糖練乳が6万7千トン (1億7千万缶)、 粉ミルク6千トン、 UHT乳6千トン、 ヨーグルト6千トン、 アイスクリーム2千トンであった。 また、 総売上高は1兆3千億ドン (約130億円。 1ドン≒0. 01円)、 対前年比35%とい う急増ぶりである。 ビナミルク社の製品は、 地元紙による昨年9月から半年間の 「好感度」 投票で1万票余りを獲得、 国内で最も好ましい商品として知名度も高 い。 実際、 ホーチミンにある本社では、 素敵なデザインの包装紙に包まれた、 ア イスクリームやヨーグルト、 また、 少し練乳の匂いが残る紙パックのロングライ フ牛乳が、 2〜3千ドンで売られており、 女性客を中心に人気を集めている。

● 国内の原料乳供給は大幅に不足


 しかしながら、 その一方では、 国産の加工原料乳供給が極端に少ないという現 状がある。 95年にビナミルク社が使用した生乳は、 1万7千トンである。 これは、 対前年比74%の増加であるというものの、 同社の乳製品の生産量からみるといか にも少ない。 現在、 高い生乳価格 (3, 550ドン/リットル) に刺激され、 ホーチ ミン市の乳牛頭数は1万5千頭に増加したが、 これは、 全国の乳牛頭数の60%に 相当するという。 このことから分かるように、 国内の乳牛の飼養頭数は極端に少 なく、 1頭当たり乳量も非常に少ない。 従って、 当分の間、 乳製品の製造は、 輸 入原料 (粉乳) に頼らざるを得ないと見られている。

● 外国乳業企業が市場参入を開始


 このような中で、 5月上旬、 ベトナムフォーモスト社 (オランダの乳業会社と の合弁会社) は、 ホーチミン市近郊の新工場の稼働を開始した。 同工場は日量16 トンの生乳処理能力を持ち、 加糖練乳 (年間1万6千トン)、 インスタント粉乳、 飲用ヨーグルトなどの生産を行う。 既に、 「ダッチレディ」 などのブランドで、 加糖練乳やヨーグルトの販売を開始している。 同社は、 酪農生産へは進出しない としており、 原料乳製品の調達は、 輸入を中心に行うと見られている。 同社の市 場参入は、 今後、 ビナミルク社の独占状態を脅かすと考えられ、 輸入乳製品の増 加もあって、 国内では新たな販売競争が展開されるものと予想される。
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