米・EU間のホルモン牛肉問題でWTOがパネル設置 (米国)





● 米国の2度目の要請で実現


 世界貿易機関 (WTO) は、 5月20日、 米国・EU間のホルモン (処理を受けた) 牛肉貿易問題について、 米国政府の要請を受け入れ、 6月中旬を目途に紛争裁定 パネルを設置することに合意した。  米国は、 EUが89年に成長ホルモン剤の使用を許可している国からの食肉輸入を 禁止して以来、 この措置が科学的根拠に欠ける非関税障壁であるとして、 その撤 廃を働きかけてきた。 しかし、 両国間の自主的な協議では解決されなかったこと から、 米国は、 今年1月、 この問題について、 WTOに対し正式に提訴した。  その後、 WTOでの紛争解決手続きにしたがって行われた二カ国間協議も不調に 終わり、 米国は、 5月8日、 紛争裁定パネルの設置要請を行ったが、 このときは EUがこれを拒否したため、 実現には至らなかった。 一方、 WTOの規定では、 パネ ル設置要請は1度しか拒否できないとされているため、 米国による再度の要求に よって、 今回は自動的にパネルが設置されることとなった。

● EUにとって形勢不利な裁定予想


 設置されるパネルは、 今年末頃までに裁定を下すものとみられているが、 関係 者の間では、 米国の主張が認められ、 EUが敗訴するという見方が一般的となって いる。  EUが昨年11月に開催した成長ホルモン剤の使用等に関する特別会議においても、 参加した科学者が、 成長ホルモン剤について、 適切に使用されれば人体に影響を 及ぼす危険性はほとんどないと結論付けている。  米国通商代表部のバーシェフスキー通商代表代理は記者会見で、 「ホルモン投 与牛肉の輸入禁止を定めたEU指令は、 正当性を欠くものであり、 設置されたパネ ルが、 WTO規定に違反しているとの判断を下すものと信じている」 と述べ、 米国 の主張が認められることへの自信を示している。

● 米国の生産者はパネル裁定に期待


 米国の肉牛関係団体は、 仮りにEUへの輸出が解禁されれば、 供給過剰に伴う肉 牛価格の低迷や、 飼料価格の高騰で苦しい状況にある肉牛生産者にとって、 大き な福音となると考えており、 パネルにおける米国勝訴の裁定に期待している。  なお、 同団体は、 EUの輸入禁止措置により、 米国の肉牛産業は、 年間2億ドル の損失を被っていると主張している。
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