米国の牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○低迷を続ける肉牛価格と行政、 業界の対応



● 86年以来の最安値を記録


 肥育牛の価格 (去勢牛、 チョイス級で1,100‐1,300ポンドのもの、 ネブラスカ の相対取引価格) は、 93年9月以降前年を下回って推移している。 96年4月は60. 4ドル/100ポンド (約140円/kg) で、 86年6月 (60.0ドル) 以来の最安値とな った。 これは、 95年の牛枝肉生産量が1,136万トンと、 史上最高となった76年に 次ぐ水準に達し、 96年はさらにこれを上回って推移していることによるものであ る。  肥育経営者は、 こうした中、 導入素牛の価格を押さえるなどの対応を図ってき たが、 肥育牛価格の低迷に加えて、 飼料穀物価格が大幅な値上がりを続けている ため、 USDAの調査によると一貫経営の収益状況 (大平原地域のフィードロット、 農機具費等は除く) は、 3月以降マイナスとなっている。  なお、 こうした状況下でフィードロットの導入頭数が今年に入って前年同月を 下回る動きをみせていることから、 USDAは、 今後肥育牛の供給が減少に向かうも のとみている。 また、 未経産牛のフィードロットでの肥育頭数が増加しているが (96年4月1日時点で前年同月比4%増)、 このことを牛群縮小の兆候と分析する 市場アナリストもいる。  一方、 肥育素牛 (去勢牛で600‐650ポンドのもの、 オクラホマシティーの市場 価格) についても、 94年に入ってから前年を一貫して下回る値動きをみせており、 特に昨年末からは、 下げ幅が20%以上とその傾向が一段と強まっている。 96年4 月は55.6ドル (約130円/kg) で、 過去10年間での最高値 (91年4月、 98.5ドル) と比べると4割以上の安値となった。

● 農務長官、 牛肉買い上げなどの対応策を発表


こうした事態を憂慮したクリントン政権は、 大統領自らが記者会見で早急な対応 を約束するなど、 この問題に積極的に取り組む姿勢を示した。  グリックマン農務長官は、 この会見を受けて、 (1)5千万ドル (約53億5千万 円) を上限として、 学校給食用に牛肉を買い上げる、 (2)短・中期の輸出信用保 証の延長などで、 輸出の促進を図る、 (3)土壌保全 (CRP) による営農停止地域で の放牧・採草を一定期間許可する (保全の必要性の高いところは除く) などの具 体策を提示した。  同長官はこれらの対策について、 価格を引き上げるほどではないものの、 市況 がさらに弱まることを避ける効果はあると述べ、 肉牛生産者の牛群処分に対する 歯止めとなることを期待している。

● 業界団体は新たな販売促進事業を計画


 一方、 1月末に発足した全米肉牛生産者牛肉協会 (NCBA) も先頃、 需要拡大に よる市場状況の改善を狙って、 新たな販売促進事業に着手することを明らかにし た。  この事業では、 米国最大のチーズメーカーであるクラフトフーズ社と共同で、 (1)チーズと牛ひき肉を利用したレシピのパンフレットを全米1万5千の食料品 店で消費者へ提供すること、 (2)米国の祭日である戦没将兵記念日 (5/27) と労 働者の日 (9/2) に全米の新聞を通じて、 牛ひき肉の割引クーポンを配布するこ と、 などが計画されている。  同事業は、 5月27日から9月2日までの実施が予定されているが、 この期間は、 例年牛肉の消費が増えることから、 NCBAでは、 ハンバーガーなどのひき肉料理と 相性がよく、 また、 一般家庭での利用頻度の高いチーズをうまく取り入れること で、 さらなる需要に拍車をかけることを意図している。  なお、 この事業の経費には、 法律に基づき、 生体牛の取り引き時や牛肉の輸入 時に徴収される課徴金 (チェックオフ) が充てられるほか、 クラフトフーズ社も 資金を負担することになっている。
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