タイの鶏肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○鶏肉需給動向



● 95年の生産量と96年の動向


 タイのブロイラー生産量は、 92年をピークに毎年減少を続けていたが、 94年は 特に大きく落ち込んだ。 95年の生産量は、 不振が大きかった94年とほぼ同水準の 631百万羽となったが、 さらなる大幅な減少には歯止めがかかった。  96年のブロイラー生産量は、 国内の消費拡大を受けて若干増加すると予想され ているが、 生産量の約半分を占める輸出に、 他の主要生産国の生産動向や最近騰 勢を強めている飼料原料価格の動向など不安定要素が多いため、 大幅な増加とは ならない見込みである。 ちなみに、 冷凍品輸出の約8割を占める日本市場では、 中国、 ブラジルの台頭により、 タイのシェアが徐々に低下する傾向が定着してい る。  なお、 最近発表された96年1月の生産量は、 前年同月比1.6%減の5,131万羽と なっており、 前月からは113万羽減少した。

● 冷凍鶏肉輸出の動向


 95年11月のブロイラー (冷凍鶏肉) の輸出量は、 前年比5.3% (金額では3%) 減の14,713トンであった。 対前年比でやや減少してはいるが、 95年ではほぼ最高 の水準となっている。  これは、 日本向け輸出が年末の需要期を前に再び1万トン台に回復したほか、 ドイツなどEU向けが増加していること、 さらにはマレーシアが断食明けの需要期 に向けて早々と輸入を増加したことによる。  しかしながら、 それらの明るい材料もごく短期的なものであり、 タイから日本 への輸出は、 1月以降大きく落ち込んでいることが既に明らかとなっている。  また、 マレーシアやドイツ向けについても、 需要期を想定したスポット買いで あり、 タイにとって安定した顧客とはなりにくい。 事実、 その後マレーシアでは 鶏肉価格が大きく低下しており、 3月以降の輸入が全面的に禁止されている。  ブロイラー生産の最大手企業であるCPグループは、 生産コストではもはや中国 に勝てないとみており、 生産拠点の海外移転を進めているほか、 タイ国内では付 加価値を高めた鶏肉調整品の生産にシフトしている。

● 競争力回復への模索


 こうした状況を打開するため、 タイ政府は、 飼料原料の輸入関税分払い戻しや 雛の生産・供給計画を発表しており、 これを押し進めることにより、 生産コスト の低下を図り、 競争力の回復を狙っている。  関税払い戻しに関し、 関税局は、 「対象となる輸入飼料で生産された鶏肉が輸 出されている」 ことが条件であるとして、 生産者に対し、 消費した飼料と出荷鶏 肉について輸入飼料分と国内産飼料分、 輸出向け鶏肉と国内向け鶏肉の仕分け記 帳を要請している。  また、 CPグループと並ぶ大手養鶏業者のサハファームは、 自社製品の競争力を 強化するため、 鶏肉の処理過程を合理化し、 2000年までに国際基準 (ISO9000) に適合した鶏肉生産を行う計画を完了するとしており、 政府、 生産者ともに競争 力回復への模索が続いている。
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