米国の鶏肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○減少の兆しをみせるブロイラー生産



● 4月までの累計は約10%増


 ブロイラー生産量は、 76年以降、 国内外の需要の伸びに支えられて、 約20年間 にわたり一貫して増加を続けている。 96年に入ってからも、 3月を除いて前年を 上回る動きを示しており、 4月までの累計では、 前年同期比9.6%増の400万トン (可食重量ベース、 骨付き) となっている。

● ひな導入羽数は減少傾向に


 このような増勢が続く中、 先行きブロイラー生産が減少に転じる兆しが出始め ている。 米国農務省 (USDA) が毎週報告している主要15州におけるひな導入羽数 は、 3月以降、 その前年伸び率が鈍化し始め、 3月末以降の週からはマイナスに 転じている。 直近の4月20日の週については、 前年比2.6%の減少となった。 こ のため、 これらの期間に導入されたひながと畜される5月末から6月にかけては、 出荷体重の増加などによる影響を無視できないものの、 生産の前年割れが予想さ れる。

● 増羽意欲減退の背景


 こうした動きの背景としては、 まず、 極めて厳しい穀物の需給逼迫がもたらし た飼料穀物価格の値上がりが挙げられる。 飼料穀物のコストは、 生産コストの約 6割を占める (93年〜95年の単純平均) が、 昨年夏以降の値上がり (トウモロコ シの価格は約2倍に上昇) が生産者の経営を圧迫し、 増羽意欲を減退させている ものとみられる。 USDAの調査によれば、 ブロイラー生産の純利益は、 昨年8月を ピークに減少を続け、 96年3月にはマイナスに転じている。  また、 最大の輸出相手国であるロシアの輸入をめぐる動向も、 要因の一つにな っている。 現地報道によれば、 業界最大手で、 ロシア向け輸出のシェアも最大と みられるタイソンフーズ社は、 同国の米国産家きん肉輸入禁止問題が契機の一つ となって、 生産削減を決定している。 この問題は、 約1カ月間の交渉を経て3月 末に正式に解決したが、 輸出量の4割弱、 生産量の6%のシェアを占めるだけに、 米国業界関係者の間で大きな懸念を生じていた。  また、 最近では、 ロシアによる関税の引き上げや輸入割り当ての導入問題など が持ち上がっており、 一部関係者には早期解決の楽観論がある一方で、 同国への 輸出をめぐる不安定さは、 業界関係者の懸案事項の一つとなっている。
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