イギリス産牛肉の禁輸をめぐり、 議論続く (EU)





● 全面的禁輸措置の継続にイギリスが強く反発


 3月27日に、 EUが牛海綿状脳症 (BSE) に関連して、 イギリス産牛肉および牛 関連製品についての輸出禁止を行って以来、 禁輸解除をめぐって、 イギリスとEU 当局、 他の加盟国との間で攻防が続いている。  当初からイギリス側は、 EUの全面禁輸措置について強く不満を表明していたが、 4月10日に開催されたEU家畜獣医委員会で、 ゼラチンおよび牛脂製品に対する禁 輸解除が見送られたことから、 態度を一層硬化させた。 4月25日には、 イギリス の農業者団体が、 今回の禁輸措置は科学的な根拠に基づいていないとして、 欧州 裁判所に提訴するなどして、 両者は対立を深めていた。

● イギリスのBSE対策強化を条件に段階的緩和


 4月30日に終了したEU農相理事会では、 禁輸解除の手順や時期などについては、 具体的な合意は得られなかったが、 イギリスがBSE対策を強化し、 実行すること を条件に、 今後、 禁輸措置を段階的に緩和して行く筋道が基本合意された。  この農相理事会での主な合意事項は、 (1)イギリスがBSEに感染した疑いのある (特に30カ月齢以上の) 牛を明確に区分し、 と畜処分を確実に実行すること、 (2) その実行についてEUが検証すること、 (3)新たに、 人体病理学や、 生物学など広 範な範囲の専門家からなる総合的な科学分析委員会を設置し、 BSE問題の対策立 案に際してはこの委員会による助言、 提案を尊重することなどで、 これらの実施 を条件として、 禁輸措置の段階的な緩和が検討されることになった。

● ゼラチン、 牛脂製品などに禁輸解除の見通し


 その後、 5月8日に開催されたEU委員会では、 イギリス産牛関連製品のうち、 製造方法や製品表示などの条件を満たす、 ゼラチン、 牛脂製品、 精液については 禁輸対象から除外する方向で、 5月15日に開催されるEU家畜獣医委員会に諮られ ることが決定された。  今回のEU委員会の決定は、 フィシュラー農業委員が 「いかなる決定であっても 科学的な根拠に基づかなくてはならない」 とし、 適切な方法で製造されたゼラチ ンと牛脂製品などは安全とする世界保健機構 (WHO) の見解を重視する方針を打 ち出したものである。 この決定に対しては、 フランスやドイツの強い反発があっ たものの、 部分的な禁輸解除の見通しが強くなった。

● 注目される次回の家畜獣医委員会


 しかし、 依然としてドイツなどは、 イギリス側が示したBSE対策を不十分とし 疑問視しており、 今回の理事会の一部禁輸見直しについても、 異議を唱えている。  一方で、 イギリスは、 メージャー首相がサンテールEU委員長に対し、 禁輸問題 の早期解決を求め、 事態の進展がみられない場合にはEU首脳会議を開催するよう 提唱しており、 15日に開催される家畜獣医委員会の結果次第によっては、 禁輸解 除に向けてさらに姿勢を強化するものとみられる。  イギリスは、 そうした強い態度に出る一方で、 5月8日には、 焼却処分を前提 として、 30カ月齢を超える牛約1千頭のと畜処分を実行した模様で、 今後順次、 と畜処分を中心としたBSE関連対策が実行に移されるものとみられる。  しかしながら、 BSEの発生メカニズムや、 ヒトへの伝播の可能性などについて は、 依然として科学的には未解決の部分が多く、 消費者の牛肉への信頼回復とい う根本的な問題解決への道のりは遠い。
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