産地限定登録規則案の名称論争が本格化 (EU)





● フェタチーズの取り扱いが焦点に


 EU委員会は、 このほど、 特定の産地に由来する農産物や食品の名称を限定登録 し、 原産地イメージや、 その特定の製造方法から生じるマーケットプレミアムを 保護するために、 その対象となる318品目の農産物・食品を登録する規則案を、 EU農相理事会に提出した。 今後、 同理事会でこの規則案が承認されれば、 その登 録産地以外で生産されている農産物・食品は、 EU域内でその名称を使用すること ができなくなる。  特に、 今回の規則案の中で大きな議論を呼んでいるのが、 フェタチーズの取り 扱いである。 フェタチーズは、 比較的低脂肪なフレッシュタイプのチーズであり、 もともとはギリシャで生産されていたが、 現在では欧州各国で生産されており、 欧州地域では、 サラダのトッピングなどに利用されている。 また、 中東諸国にも 輸出されており、 これらの国々では、 重要なたんぱく源の一つとなっている。

● ギリシャ以外の産地では、 「フェタ」 の使用禁止


 ところが、 今回農相理事会に提出された同規則案では、 このフェタチーズは、 その原産地がギリシャに限定され、 また、 原料も山羊または羊の乳でなければな らないとされている。  したがって、 同案が承認されれば、 デンマーク、 フランス、 ドイツなどギリシ ャ以外で (実際には、 牛乳から) 生産されている製品は、 97年7月以降、 フェタ チーズの名称をEU域内では使用することができなくなる。 一方で、 域外向けの輸 出に関しては、 それらのチーズは、 その後もフェタチーズの名称を使用し続ける ことができる。  ちなみに、 同規則案では、 特定産地に由来する名称であっても、 既に一般に広 く普及しているチーズのブリー、 カマンベール、 チェダー、 エダム、 エメンター ル、 およびゴーダの6種類については、 限定登録して保護の対象としない ( 「ノ ルマンデイー産カマンベール」 の名称については、 保護の対象となる)、 一般的 名称と認定している。

● デンマークなどの強い反発


 この規則案に対して、 既に20年も前からフェタチーズを生産し、 イラン、 サウ ジアラビアなど中東諸国向けに、 年間約6万トン以上を輸出するとともに、 最近 では域内における輸出も着実に伸ばしつつあるデンマークは、 強硬に反対してい る。   この反対理由としては、 (1)域内取引にフェタという名称が使用できなくなれ ば、事実上、 域内輸出が極めて困難になること、 また一方では、 (2)域内では禁止 しておきながら、 域外向け輸出には、 フェタの名称の使用が可能となるようでは、 輸出市場が混乱するばかりか、 域内および域外のユーザーの信用を失いかねず、 今後のマーケッティングにおいては、 極めて不利になることなどを挙げている。  また、 アメリカへの輸出を行っているフランスのフェタチーズ生産者も、 同様 にこれに反対している。

● 規則案の承認には、 容易に至らない見込み


 今後、 EU農相理事会は、 この規則案に対し3カ月以内に、 承認あるいは否決か の決定を迫られることになる。 しかしながら、 このように反対の声が多いことか ら、 今回の規則案は、 容易には承認されないだろうというのが一般的な見方であ る。
元のページに戻る