飼料穀物輸入の規制緩和は先送りか (豪州)





● 防疫上、 輸入穀物の加熱処理を義務付け


 豪州では、 94年に、 干ばつによる穀物の大幅減産に伴って飼料用穀物の緊急輸 入が実施された。 この際、 防疫上の観点から、 輸入穀物は、 加熱処理を行ってか ら内陸輸送することが義務付けられたが、 フィードロット関係者は、 加熱処理な どがコスト増の要因となるため、 未処理品でも輸送が可能となるよう連邦政府に 求めてきた。  これを受けて、 豪州検疫検査局 (AQIS) は、 関係者と協議を重ねた上で、 95年 4月に穀物の輸入・輸送に関するガイドラインを策定し、 防疫上の安全性確認の ためのトライアル (輸送試験) を経て、 未処理の輸入穀物の国内輸送を実現させ る手はずとなっていた。

● 国内の穀物関係者が規制緩和に激しく抵抗


 ところが、 トライアルの実施に対しては、 加熱処理の義務付けを強く主張して きた国内の穀物関係者が強く抵抗したことから、 実施規模が当初計画より大幅に 拡大されるとともに、 実施方法の細部調整にかなりの時間を要した。 このため、 AQISは、 今年1月になってようやくトライアルをスタートさせたが、 開始直後に、 穀物やダスト (塵埃) の飛散などの問題が発生し、 これまで中断を余儀なくされ てきた。  AQISは、 これらの問題を改善した上で、 まもなくトライアルを再開する予定で あったが、 一貫してトライアルに反対する穀物関係者は、 連邦政府に再開の停止 を求めていた。

● 第一次産業大臣が輸送試験の中止を示唆


 こうした中、 アンダーソン第一次産業大臣は、 先ごろ開催された豪州穀物評議 会 (GCA) の会合で、 トライアルを中止し、 将来の飼料穀物の不足時にも、 ユー ザーは加熱処理した輸入穀物の使用を検討すべき旨を示唆した。  当初、 アンダーソン大臣は、 GCAの要求を一蹴するものとみられていたが、 今 回の方向転換の背景には、 米国で最近、 小麦の黒穂病が発生したことや、 イギリ スでのBSE騒動などから、 検疫の重要性が認識され、 その強化を要請する声が各 界から高まっていることなどがあると考えられる。

● フィードロット業界にとっては思わぬ逆風


 トライアル再開の最終決定は、 トライアル評価パネル委員長 (豪州農民連盟会 長) に委ねられている。 この決定は、 5月中旬にも下されるものとみられるが、 アンダーソン大臣の意向は、 これに相当の影響を与えるものと思われる。  したがって、 厳しい経営環境におかれ、 安価な輸入穀物の供給を待ち望んでい る豪州のフィードロット産業関係者にとって、 今回の大臣発言は、 将来の経営展 望を妨げる暗雲となるかもしれない。
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