マイナスに転じた対日ブロイラー輸出 (中国)





● 平成7年度は前年度比約30%の増加


 平成7年度 (4月/3月) の中国の対日ブロイラー輸出 (わが国の輸入通関ベ ース:以下で同じ) は192千トンとなり、 前年度比で29%の増加を記録した。 また、 日本国内の輸入ブロイラーに占めるシェアについてみても、 平成6年度の31%か ら、 7年度には36%とシェアを一段と拡大した。 経済改革開放の波に乗って、 急 速に近代的な生産体制が整った中国ブロイラー産業は、 価格競争力を武器に、 順 調に対日輸出を伸ばしてきた。 特に平成6年度には、 輸出が前年度比で+81%(5 年度:+32%、 4年度:+31%) と急増して、 2段抜きで第一位の対日輸出国の 座につき、 内外の鶏肉関係者の注目を集めた。

● 必ずしもペースダウンではない増加率


 平成6年度の増加ペースがあまりにも急激だったことや、 中国に奪われたシェ アの奪還を期す米国やタイの巻き返しを考えて、 7年度には対日輸出の増勢も、 「踊り場」 にさしかかるのではないかとみられていた。 しかしながら、 実際には、 前年度実績には遠く及ばないものの、 30%近くの増加を達成した。 比較の対象と した昨年度の81%増は 「出来すぎ」 であって、 7年度の約30%の増加は、 4、 5 年度の増加率に比べると遜色のない水準となっている。 したがって、 少なくとも 統計的な側面からは、 好調な輸出が続いたとみることができる。

● 輸出税制改革案が駆け込み輸出を加速


 平成7年度においても、 高水準の輸出増が維持された要因としては、 昨年初め に公となった、 輸出品に関する税制の改革案が挙げられる。 中国当局は、 輸出品 に対する増値税 (付加価値税) の還付制度を、 95年下期 (平成7年7月以降) か ら廃止することを示唆した。 このため、 還付を前提として経営に当たっている輸 出ブロイラー企業は、 その影響を最小限にくい止めるべく、 駆け込み輸出に走っ たとされる。 なお、 95年1〜7月の対日輸出量は、 前年同期比で108%も急増し ており、 この間の輸出攻勢がいかに激しいものであったかを示している。 こうし たことから、 この 「駆け込み」 輸出がなければ、 実質上は、 「踊り場現象」 が出 現していたであろうことは、 想像に難くない。

● 平成7年度下期は一転してマイナスに


 その後、 税金の還付廃止案は、 輸出企業からの猛反発を受けて先送りされたこ とから、 8月以降、 「騒ぎ」 は急速に終息に向かった。 その後の輸出状況を平成 7年度下期 (95/10〜96/3) についてみると、 前年同期比は−6%となり、 通 年ベースではみえなかった停滞がはっきりと表れている。 これには、 1〜7月の 駆け込み輸出の反動要素を加味しなければならないが、 それ以外の実際面での原 因としては、 (1)全体としても、 わが国のブロイラー輸入の増加率が低下していること。 (2)飼料価格が高値に張り付いていることから、 最近の価格水準では、 輸出の採 算割れ傾向が進みつつある (中国ブロイラー関係者) こと。 (3)これに対して、 中国の国内需要の方は概ね順調で、 価格も横ばい傾向で推移し ていることから、 急速に輸出メリットが減退していること。  などの経済的な諸要素が挙げられる。 このことから、 中国の対日輸出は、 当面、 前年割れの状況が続くことが予想される。

● チルドの輸出は今後も好調を維持するか


 一方、 そうした状況下においても、 チルド製品の輸出は、 好調を維持している。 鮮度寿命の短いチルド製品は、 現実には、 輸送距離が短い中国の独壇場 (対日輸 出シェアは98%強) であり、 その輸出量は、 平成7年度には前年度比+130%と 急増して6千2百トンとなった。 チルド製品は、 全体の輸出量がマイナスとなっ た7年度下期でも、 前年同期比+100%以上の増加を記録しており、 全体傾向と は際立った対照をみせている。 輸入チルドには、 次第に需要がつき始めており、 かつ、 現地の製造能力が2万トン (中国ブロイラー関係者) あること、 さらに、 有力な競争相手もいないことなどから、 今後も好調さを維持するものと考えられ る。
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