鶏肉価格がようやく回復へ (マレーシア)





● 需要期に向けて供給対策


 マレーシアのブロイラー生産は、 94年の週当たり平均約550万羽から、 95年に は同650万羽に近い水準に増加し、 今年は同700万羽を超える需要があると見込ま れている。 こうした中、 2月には、 同国のフェスティバルシーズン (イスラム系 の 「断食明け」 と中国系の 「春節」 が重なる時期) の需要期を迎えた。 このため、 ブロイラー生産者は、 初生雛を輸入して生産拡大を図る一方、 政府も、 鶏肉不足 対策として、 昨年8月以降、 12月までに1千トンを超える冷凍鶏肉の輸入を行っ た。 この背景としては、 「ゼロインフレ」 を旗印とする政府にとって、 主要な生 活物資の価格が一時期の需給ひっ迫によって高騰することは絶対に回避したいと の意向があった。 これらの対応により、 昨年、 ブロイラー価格は、 生体 (6週齢、 平均2.4kg) キロ当たりで、 生産コスト見合い価格といわれる2.8RM (1RM=43円) をほぼ維持してきた。

● 需要が盛り上らず価格が急落


 ところが、 今年は、 「フェスティバルシーズンの需要が予想ほど高くならなか った」 (連邦畜産生産者協会) ため、 逆にブロイラーの極端な供給過剰となって しまった。 この結果、 今年に入って2.6RM前後で推移していたブロイラー価格は、 フェスティバルシーズン中も例年になく低い水準で推移し、 シーズンの終了とと もに急落した。 需要期が過ぎた3月下旬には、 ここ3年の最低価格である1.5RM (生体、 生産者価格) を記録する事態となった。 さらに、 最近の飼料価格高騰に よる生産コストの上昇もあって、 ブロイラー生産の経営環境は、 一層厳しいもの となっている。

● 生産者の自主規制で価格が回復


 このため、 大規模生産者は、 農業省が冷凍鶏肉の輸入を行ったことを非難する 一方、 これまでに100万羽の初生雛を廃棄処分したことを明らかにした。 これに ついて、 農業副大臣は、 「供給過剰を解消するための最初の試みである」 と歓迎 し、 適正な生産量が週650万羽であるとして、 政府としても鶏肉の輸入を3月以 降禁止すると発表した。  このような需給調整に向けた生産者および政府双方の対策によって、 ブロイラ ー価格は、 4月上旬には2.8RMにまで回復し、 ほぼ生産コストに見合うといわれ る水準まで価格を戻した。 ブロイラー価格急落をめぐる紛糾は、 ひとまず、 落ち 着いた、 というところである。 しかし、 この間の経緯が示すものは、 1人当たり 年間27kgもの家禽肉を消費するマレーシアでは、 鶏肉産業が既に成熟期に入りつ つあるという点である (日本の消費量は正肉ベースで11kg)。 この点から見ると、 マレーシアの鶏肉需給は、 生産量の変動いかんによっては、 今後も、 大幅な需給 アンバランスを繰り返す可能性があるといえよう。
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