BSE問題への対応 (米国)





● USDA、 BSEの存在を直ちに否定


 米国農務省 (USDA) は、 イギリス政府が3月20日、 牛海綿状脳症 (BSE) とク ロイツフェルト・ヤコブ病 (CJD) の関連を示唆する発表を行った後、 同日付け で、 (1)89年以降、 イギリスからの生体牛および牛肉の輸入を行っていない、 (2) 89年以前にイギリスから繁殖目的で輸入された牛は、 6カ月ごとに検査されてお り、 今後もこれを継続する、 (3)これまでBSEに感染した牛は、 米国には存在しな い、 などの事項をプレスリリースで明らかにした。

● 飼料、 教育分野などでのBSE対策案を発表


 USDAは、 この声明に続いて、 関係官庁や業界の協力の下に、 (1)BSEが広がった 理由とみられる、 反すう動物用飼料への反すう動物たんぱくの使用を禁止する規 則を制定する、 (2)関係官庁や民間獣医師などの協力の下に、 USDAの動植物衛生 検査局 (APHIS) のBSE調査事業を拡大する、 (3)食肉処理工場におけるFSIS検査 官に対し、 BSEの徴候を認識する能力を高めるための研修を行う、 (4)APHISなど の協力により農業技術普及 (エクステンション) 組織を通じて、 生産者、 飼料コ ンサルタント、 獣医師などにBSEについての知識を普及させる、 などの対策案を 示した。  なお、 (1)については、 正式な規則決定に先立ち、 肉牛生産者団体などが3月 末に、 自主的にその使用を禁止することを決定している。 飼料に使用される反す う動物のたんぱくには、 肉骨粉などがあるが、 米国では、 牛に供与されるたんぱ くのおよそ5%を占めているものとみられている。

● 英国産生体牛のと畜で基本的に合意


 4月3日には、 APHIS主催の会議が開催され、 参加した州政府衛生担当官、 繁 殖牛協会、 全米肉牛生産者牛肉協会などの関係者は、 89年以前に輸入された英国 産生体牛について、 他の牛群から隔離し、 最終的にはと畜することで基本的に合 意した。  実行は連邦政府の命令に基づくものではなく、 州政府の自主決定に委ねられ、 対象牛の所有者には相応の補償金が支払われるものとみられる。  なお、 英国産の牛は、 4月10日現在、 19州において99頭飼養されている。

● 国内消費、 輸出需要への影響を懸念


今回、 USDAが、 早急かつ矢継ぎ早にこの問題への対応を打ち出した背景には、 国内消費や輸出需要に悪影響を与えないようにとの配慮がある。 現在、 米国では 牛肉供給の増加から、 肉牛価格は大きく下落しており、 今回の問題への対処が不 適切で牛肉需要が減退した場合、 市況が一段と悪化することを懸念したものであ る。
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