タイの鶏肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○タイの鶏肉需給


● 増加基調に転じた鶏肉生産


 タイ農業協同組合省から公表された統計によると、 ブロイラーの7月の生産量 は57百万羽となり、 3カ月連続して前月を上回った。 ブロイラー生産量は、 93年 7月以来減少を続けてきたが、 94年12月に底を打った後は、 よこばいで推移して きた。 3カ月連続で生産量が増加するのは、 生産量が75百万羽と過去最高を記録 した93年7月以来3年振りのことである。 増加に転じた最も大きな要因は、 鶏肉 に対する国内需要の拡大と見られており、 かつて、 日本向け輸出の不振が、 生産 に直接大きく影響して減産が続いた状況からは、 徐々に脱却してきている。 また、 全体として低調な日本向け輸出の中で、 調製品の輸出が引き続き好調であること や、 EU向け冷凍鶏肉の輸出が拡大していることも要因として挙げられる。

● 輸出競争力回復へ本腰を入れる政府の動き


 近年、 タイでは、 生産コストの上昇や競争相手国の台頭により、 冷凍鶏肉だけ でなく、 主要輸出品の多くについて大幅に輸出量が減少したことから、 経済成長 の減速が大きな問題となっている。 このため政府は、 8月に、 原料輸入関税の引 き下げを中心に据えた、 輸出振興対策ガイドラインを発表した。  畜産分野においても、 この対策の一環として、 鶏肉生産の原材料ともいえる飼 料原料の輸入制度の見直しが行われた。 10月には、 97年の飼料原料の輸入政策に ついて現行の関税割当制度を撤廃するだけでなく、 関税率そのものも引き下げる ことが閣議決定された。 これにより、 飼料原料の輸入に係る関税負担額は大幅に 縮小することになる。  また、 飼料原料の輸入関税の還付については、 現在申請から還付までの日数が 特定されていないが、 申請後30日以内に還付できるよう手続きを簡素化するため の規則の改正が、 11月5日の閣議で了承された。  政府のこれらの動きは、 鶏肉生産費の6割以上を占める飼料コストの引き下げ に直接的に結びつくものであり、 タイ産鶏肉の競争力回復につながるものとして、 養鶏業界は高く評価している。 しかし、 農業関係者の一部には、 国内の飼料原料 生産農家への影響を懸念する向きもある。

● 強気のブロイラー輸出業界団体 (97年の見通し)


 このような状況の中で、 大手ブロイラー企業が加盟するタイブロイラー加工輸 出業者協会は、 97年の鶏肉生産、 輸出に関する見通しを明らかにした。 これによ ると、 97年の生産量は、 96年の7億3千万羽 (見込み) から少なくとも10%以上 増加し、 8億羽に上るものと予想している。  輸出に関しては、 飼料輸入制度の見直しにより、 競争力がやや回復し、 日本市 場向け冷凍鶏肉の輸出についても、 96年の93千トン (見込み) から若干増加して、 97年には95千トンになると予測している。 EU向け輸出は、 需要の拡大がまだ続く ことなどから、 97年も引き続き大幅に伸び、 輸出先も現在のドイツ、 オランダな どの5カ国から全加盟国に広がるとみている。  また、 調製品については、 最も 有望な輸出商品として位置づけており、 96年の輸出量3万トンから、 97年には約 60%増加して48千トンの調製品が輸出されるものと非常に強気な見込みとなって いる。
元のページに戻る