牛肉市場安定化対策のテコ入れに合意 (EU)



域内牛肉需給の大幅な緩和に対応


 EU農相理事会は、 牛海綿状脳症 (BSE) 問題の影響により牛肉需要の大幅な低 下が続く中、 10月末の定例理事会で、 関連対策の強化に合意した。 今回の合意 には、 子牛の処分の拡大による生産抑制や、 介入買い上げ量の引き上げといった 市場安定化対策、 また生産者の所得減に対する補償金の交付などが盛り込まれて いる。  一連の対策パッケージに要する97年の事業費は18億ECU (約2, 600億 円) と見積もられているが、 97年のEU農業予算案は、 既に欧州議会に提出済み であることから、 今後、 その農業予算418億ECU (約6兆5百億円) のシーリ ング内で、 予算案の組み替え作業が行われることとなる。

子牛段階のと畜奨励を拡充


 現在、 牛肉生産を抑制するため、 イギリス、 ポルトガル、 フランスで実施され ている子牛処分奨励金制度 (乳用雄子牛を生後20日以内に処分した場合、 奨励 金を交付する制度) についは、 交付対象に肉用雄子牛を含めることとなった。 ま た、 その国の子牛の平均と畜体重の85%以下の体重で子牛 (雄雌とも) を処分 した場合にも、 奨励金を交付する制度が、 新設されることとなった。  加盟国は、 本年12月1日から2年間、 両制度のうち、 少なくとも一つを採用 しなければならないとされており、 EU委員会は、 この措置により、 約100万頭 を、 子牛の段階でと畜することを目指している。

雄牛特別奨励金は交付回数を減らし単価を増額


 雄牛特別奨励金制度 (雄牛または去勢牛を対象に、 10カ月齢と22カ月齢時 の2回にわたり、 108. 7ECU/頭 (約15, 700円の奨励金が交付され る制度) については、 雄牛 (非去勢) の出荷体重の増加要因となっていた22カ 月齢時の交付を廃止し、 交付回数を1回 (10〜21カ月齢の間) とする代わり に、 交付単価を、 135ECU/頭 (約19, 500円) に増額することになった。 また、 EU全体の交付上限頭数が、 現行の112万頭から92万頭に引き下げられ たため、 加盟国ごとの交付上限頭数も見直しされることになる。  また、 粗放化奨励金制度 (家畜の飼養密度が1.4家畜単位 (LU) 未満の飼養 者に対して、 繁殖雌牛奨励金や雄牛特別奨励金に36.23ECU/頭 (約5,2 00円) を加算する制度) は、 飼養密度が1LU未満の場合には、 奨励金単価が5 2ECU (約7, 500円) に増額されることとなった。

介入買い上げ上限量は、 55万トンに引き上げ


 一方、 96年の牛肉の介入買い上げ上限量 (当初40万トン) は、 EU委員会の 72万トンへの引き上げ提案に対して、 55万トンにとどまった。 両者の差は金 額にして約3億ECU (430億円) 相当と見られる。 ただし、 輸出補助金の削減 約束が実行されていることから、 今後、 牛肉の輸出ペースに陰りが出ると見込ま れるため、 この上限数量は再度見直しされる可能性がある。

総額5億ECUの生産者補償を追加


 また、 生産者の所得減に対する補償は、 97年度 (暦年) 予算では、 総額5億 ECU (約720億円) とすることになった。 これは、 7年度予算分として、 6月 に決定された8億5千万ECU (約1, 230億円) の補償措置に続くものである。 この措置についは、 EU委員会が、 財政事情が悪化していることや、 BSE問題に伴 う生産者の損失見積りが当初の予想に比べて大幅に減少したことから反対の姿勢 を示し、 今理事会最大の争点となったが、 各国農相の強い意向で、 その実施が決 められた。  なお、 農相理事会は、 今回合意された措置は、 あくまで短期的な対策であると し、 EU委員会に対して、 再度長期的な対策案を作成するよう要請している。
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