繁殖雌牛奨励金制度の運用状況 (EU)



支給枠未消化と繁殖雌牛増加という矛盾


 EU委員会は、 繁殖雌牛奨励金の実施状況に関する報告を発表した。 同制度は、 生産者への所得対策として繁殖雌牛の頭数で奨励金を交付するものであるが、 9 3年度からは、 生産増加と財政支出の膨脹の防止対策として、 各国別に交付上限 頭数を設置、 固定するとともに個人枠を設置するなどのクオータ制度が導入され た。  しかしながら、 交付対象頭数 (旧EU12カ国) をみると、 92年の979万頭 から95年には985万頭に増加した一方で、 未使用枠が100万頭残っている。 また、 全体の繁殖雌牛頭数も92年の約1, 000万頭から95年には9%増 加し、 約1, 100万頭となっており、 当初の狙いとは異なった結果となって いる。  このため、 今回の報告の中では、 その個人別クオータ制度の導入当初の目的が 達成されていないと総括されている。

交付上限頭数の過大な設定と追加枠が要因


 このような原因を生んだ要因としては、 そもそも1,083万頭という当初の 交付上限頭数の設定が過大であったことが第一に挙げられている。  交付上限頭数は、 生産者の申請実績に加え、 いくつかの特別枠の合計として設 定された。 このうち、 生産者の申請実績は、 基本的に将来の個人枠となるもので あり、 大半の加盟国が92年を基準年とした。 この際、 同年中に基準年が決定さ れたため、 将来を見越した枠の確保のために申請頭数が一挙に増加し、 92年の 申請頭数は前年に比べ15%、 130万頭増加し、 980万頭に達した。 翌93 年の申請頭数は930万頭に減少しており、 生産者が十分な枠を確保したことが うかがわれる。  また、 交付条件の緩和に伴い80万頭以上の枠が追加設定されたことも、 生産 抑制という目的を達成できなかった要因の一つとして挙げられている。 繁殖雌牛奨励金の交付状況
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