「食糧白書」 を公表 (中国)



初めての食糧問題 「白書」


 中国国務院新聞弁公室 (英名直訳は国務院情報室) は、 去る10月24日に北 京で、 「中国の食糧問題」 と題する文書を公表した。  内容的には、 食糧 (主食、 飼料となる穀物。 一部のマメ類 (大豆など) 、 イモ 類を含む) の需給問題についての、 過去、 現状、 将来見通しなどに関する論文形 式のものとなっている。  なお、 これは、 この種のものとしては初めて刊行されたもので、 関係者の間で は、 公表と同時に 「食糧白書」 と通称されている。

世界食糧需給における中国 「脅威論」 を明確に否定


  「白書」 では、 広範な内容が展開されているが、 結論として重要なことは、 (1) 91〜95年において、 中国の全糧食生産量に対する輸入の割合は0.4% にすぎず、 国際穀物市場の安定を脅かすものではない (2) 今後も基本的な自給 方針を堅持するもので、 通常の状態 (天候状態や作柄のことか) では自給率が9 5%を下回ることはない、 と強調している点である。 これには、 需要の増加と一 昨年の不作により、 中国が穀物の純輸入国 (95年) になったことから生じた、 世界食糧需給における中国脅威論 (例えば、 「誰が中国を養うのか」 R. ブラウ ン著などにみられる) を、 強く否定する意味合いが込められていると受け止めら れている。

2030年の予想総需要量は約6億4千万トン


 一方、 世界の食糧関係者の注目を集めている、 来世紀の糧食の需要動向につい ては、 次のとおり予測している。 2000年 5億トン    (一人当たり:385kg人口約13億) 2010年 5億5千万トン (一人当たり:390kg 人口約14億) 2030年 6億4千万トン (一人当たり:400kg 人口約16億 (ピーク予想) )  このうち、 第九次五ヵ年計画 (96〜2000年) では、 最終年の糧食の生産 目標を4億9千万〜5億トンとしており、 目標が順調に達成されれば、 2000 年には純輸入は、 ほとんどないことになる。 なお、 最新の情報では、 96年の糧 食生産量が4億8千万トンと予想されることからすると、 その実現にはそれほど 困難はないと考えられる。  一方、 別の見方からは、 仮に5%の供給不足という 「通常最悪」 のシナリオを 描いた場合は、 2030年の純輸入量は3千2百万トンということになる。 なお、 近年の世界の穀物貿易量は2億トン前後 (大豆を除く:米国農務省資料) である ことから、 このシナリオの可能性・影響をどう評価するかがポイントとなろう。

単収の向上、 ロス低減などが自給維持策の中心


 また、 「白書」 は、 糧食の基本的な自給を将来にわたって維持するための重点 政策としては、 次の3項目を挙げている。  1)農業基盤整備の推進や科学技術の積極的な応用により、 単位面積当たりの収   穫量のアップを図る  2)未利用可耕地、 他用途転用農地の農地復活により、 1億1千万haの作付け面   積 (現在とほぼ同水準) の確保  3)収穫・流通・加工段階での減耗等ロスの低減策などを通じての、 糧食のムダ   の削減 に力を入れて、 供給量の拡大につなげる方針であることを明示している。  なお、 これらの施策を推進し実現を図る政策的裏打ちとして、 近年、 中央政府 は、 マクロ経済計画の中での財貨等の配分や資金投入において、 糧食生産を軸と した農業部門に、 優先的に配分する政策を既に実行に移しつつある。
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