豚肉市場の動向 (中国)



公的流通部門の豚肉取扱量が急増


  「肉禽蛋信息」 紙によれば、 96年上半期 (1−6月) の国営の販売・購買系 統 (国営商店などへの流通系統とみられる) の豚肉取扱量が急増している。 その 内訳では、 購買量が対前年度比約12%増加したのに対して、 販売量の方は、 同 約25%と急増している。 (購買量約146万トン、 販売量約253万トン) 。 また、 そうした売買状況の結果として、 6月末の豚肉在庫量は35万トンと、 前 年に比べて約3割減少している。

値崩れ防止の調整保管実施がその背景に


 経済成長による需要増に刺激されて肉類の生産が急増した中国では、 主要食肉 全体の7割以上と圧倒的シェアを占める豚肉について、 95年春頃から、 生産過 剰傾向が現われはじめた。 その後、 特に同年夏頃からは豚肉市場価格の低迷傾向 が顕在化してきたことから、 価格の下支え効果を狙って、 豚肉の調整保管が継続 的に実施されてきた。  この調整保管 (生体での 「出荷調整」 を一部含む) は、 中央政府国内貿易部 (国内通産省に相当) 傘下の各級商業公司や省・市レベルの食肉コンビナートな どの公的セクターを舞台に実施されてきた。 したがって、 96年上半期に、 公的 流通系統の取扱量が急増した理由の一つは、 そのような事情を反映したものと考 えられる。

定点と畜の奨励も取扱量の増加に反映か


 また、 もう一つには、 中央政府が、 衛生・品質向上、 流通合理化等の観点から、 近年、 一定要件を満たす特定拠点 (と場、 食肉工場など) でのと畜と、 近代的な 市場取引による食肉流通 (いわゆる 「定点と畜」 ) を推進していることが挙げら れると考えられる。  現在でも食肉の7割以上のシェアを占める豚肉は基幹食肉であるが故に、 伝統 的に国営企業を軸とした生産形態が中心となっている。 このため、 政府の定点と 畜の奨励が、 結果として公的流通系統の取扱量の増加につながっているものとみ られる。

販売量急増の背景には市場価格の好転が


 購買量に比べて販売量が大きく増えたのは、 在庫減らしが理由の一つとも考え られるが、 その前年比からみるとネット減は15万トン程度と推計され、 その影 響度合いは小さいものと考えられる。 したがって、 販売量が大きく増えた要因に ついては、 むしろ、 それを可能にした市場 「環境」 の変化の方に注目すべきであ る。 豚肉の市場価格には、 今年夏までに顕著な回復傾向が表れたわけではないが、 全体的にみれば、 安定化から徐々に上昇をうかがう気配が出てきたことが、 その 背景にあるものと考えられる。  年度途中の詳しい需給統計に不案内であることから、 豚肉市場が転換点を向か えた背景分析は困難であるが、 その市場価格は、 今年夏までに、 最大産地である 四川省では横ばいから強含み傾向に、 また、 代表的消費地である上海では、 冷蔵 ものを中心に強含み傾向から上昇傾向に転じている。 したがって、 地域差を生じ つつも、 全体としてみれば、 低迷を脱する転換点にさしかかっている兆候がみら れる。 <成都肉類産品卸売市場 (四川省) > ───────────────────── 8月中旬 2月始め ───────────────────── 冷凍枝肉 9,000(+2.3%) 8,700(-14.7%) 冷蔵枝肉 − − ───────────────────── <上海肉類商品卸売市場> ──────────────────────────── 8月中旬 2月始め ──────────────────────────── 冷凍枝肉 10,900(比較対象無し) 8,430(比較対象無し) 冷蔵枝肉 11,350(+12.9%) 10,075(-4.0% 2月中旬) ──────────────────────────── (注)1 単位:元/トン (1元=約13.5円)  2 ( ) 内は対前年比   3 資料 肉禽蛋信息
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