期待の大きい個体識別へのマイクロチップ利用 (米国)



マイクロチップを利用した個体識別


 家畜の個体識別には、 いろいろな方法が用いられているが、 その中でもプラス チック製の耳標が一般的な手段として利用されてきた。 しかし、 取れやすいとい う問題のほかに、 収納できる情報量が少ないという制約もあった。 個体識別の目 的は、 家畜衛生対策での利用の要素が大きい。 ただし、 それ以外にも、 飼養管理 や経営管理、 改良・増殖など幅広い分野での必要性が高まっている。 そこで、 さ まざまな情報の管理が可能となるマイクロチップを利用した個体識別が注目され ている。 マイクロチップの実用化には、 コスト的な問題などが残っているものの、 米国では、 その使用拡大の道が開かれつつある。

埋め込み式トランスポンダを認定


 これまでは、 保険社会福祉省食品医薬品局 (FDA) が、 マイクロチップと受送 信機器を組み込んだ微細なトランスポンダを、 と畜時に回収することを義務付け ていたため、 その利用はごく限られたものであった。 その後、 FDAは、 マイクロ チップ利用による家畜の衛生対策の向上を目的に、 この規則を廃止する一方で、 95年には、 メタル製のトランスポンダの動物の非可食部分への埋め込みを認め ると発表した。  このことを受けて米農務省食品安全検査局 (FSIS) は、 ミネソタ州の会社の申 請に対し、 食用に供しない組織である1) 耳根の軟骨の皮下部、 2) 足のけ爪の上 の皮下部、 3) 豚においては、 眼かの下の皮下部、 4) 馬においては、 首筋のじん 帯、 の四カ所を埋め込みが可能な場所として、 今年9月に認定したと発表した。

幅広い分野での利用が可能


 今回の認定により、 今後は家畜衛生対策を目的とした利用の増加はもちろん、 ペットや野生動物や回遊魚の生態調査など、 幅広い分野に利用されるものと予想 される。  将来的には、 国の補助による研究開発が必要であるとの前提ながらも、 マイク ロチップに寄せる関係者の期待は相当のものがある。
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