EUの牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○膨らむEUの介入在庫量


● 94年以来の高水準に


 EU委員会が先に発表した96年6月末時点での牛肉介入在庫量は、 14万5千トン (枝肉換算数量) に上り、 94年10月以来の高水準となった。  介入在庫量は、 92年には100万トンにも達していたが、 93年後半以降、 介入買 入れが行われなかったことから、 その後減少を続け、 今年3月には8千トンにま で低下していた。 しかし、 牛海綿状脳症 (BSE) 問題の関連対策として、 今年4 月から介入買入れが再開され、 毎月、 EU全体の消費量の1割前後にも相当する、 5万〜7万トンの買入れが行われている。

● ドイツ、 フランスが半数以上


 介入買入数量を国別にみると、 EUの牛肉二大生産国、 ドイツ、 フランスで全体 の63%を占めた。 これに、 スペイン、 アイルランド、 イギリスがそれぞれ7〜8 %で続いている。  EU域内の牛肉の消費水準は、 北欧やオランダなど一部では3月以前の水準にま で回復したものの、 その他の国々では、 未だに10〜25%も落ち込んでいるとされ、 これらの地域では介入買入の発動が大幅な肉牛価格の上昇につながっていない。 EU全体としての牛肉消費の回復と、 肉牛価格の上昇に大きなカギを握る、 イギリ ス、 フランス、 イタリア、 ドイツといった国々では、 依然、 肉牛価格の低迷が続 いている。 表:国別介入在庫量

● 買入上限を引き上げへ


 このような状況から、 9月25日の非公式農相会議では、 96年の介入買入数量の 上限の引き上げが合意された。 牛肉の介入買入数量については、 既に92年の共通 農業政策 (CAP) 改革時に、 96年については40万トンの上限が設定されていたが、 今回の合意により6万トン増の46万トンにまで引き上げられる見込みとなった。  なお、 この会議では、 BSE問題関連対策の一環として、 96年度農業予算の未消 化分から約500万ECU (約7億1千万円) 支出することも合意された。 これは、 既 存の雄牛特別奨励金や繁殖雌牛奨励金を通して肉牛生産者に給付されることが予 定されている。

● 膨脹する牛肉関連予算


 買入数量の上限引き上げについて、 農相間では、 既に設定されていた40万トン の倍近い72万トンとする声が強かったが、 この財源に穀物関連の予算の一部を充 てるとする案に対して、 EU議会が難色を示したことなどから、 6万トンの追加に とどめられたとみられる。 また、 牛肉生産を抑制せずに単に介入在庫を積み増す ことは、 供給過剰という根本的な問題を複雑にするだけとの判断も強く働いたも のとみられている。  BSE問題に関連しては、 牛肉のさらなる供給過剰対策が強く望まれる一方で、 EU委員会は、 その対策に要する予算措置をめぐって、 今後のCAP改革も絡めた厳 しい運営を迫られそうだ。
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