米国の牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○肉牛価格動向等について


● 肥育素牛価格等


 米農務省 (USDA) によると、 96年1月から9月の肥育素牛価格 (ミディアムNo 1の600〜650ポンド (オクラホマシティーの市場価格) ) は、 前年同月を2.9% から25.8%下回って推移した。 月別に見ると、 1月から5月までは、 ほぼ100ポ ンド当たり50ドル台後半で、 また、 6月以降は同60ドルをやや上回る水準で推移 した。 5月以降は、 放牧シーズンが始まって、 飼料の需給が緩和されたことによ り、 素牛生産者が出荷を手控えて、 価格がやや回復基調となった。  一方、 フィードロットの肥育素牛の導入頭数は、 メキシコからの肥育素牛の輸 入が、 同国の牛飼養頭数の減少と牧草生育状態の好転、 さらには経済状態の改善 に伴う国内牛肉消費の増加によって減少したことに加え、 米国の肥育牛価格の低 迷及び穀物価格の高騰によりフィードロットが素牛導入を控えたこと、 また、 フ ィードロット側が利益を維持するために導入する肥育素牛の価格を抑えたことも あって、 前年を下回って推移した。

● 肥育牛価格


 96年上半期の肥育牛価格 (去勢牛、 チョイス級、 1,100〜1,300ポンド、 ネブラ スカ) ) は、 穀物価格が高騰する中で、 と畜頭数及び牛肉生産量の増加によって、 前年同月を3.4%から13.5%も下回って推移した。 月別に見ると、 1月に100ポン ド当たり63.9ドルであったのが4月には同59.7ドルまで低下し、 その後、 6月に は同61.6ドルまで回復した。  こうした肥育牛価格の低迷と穀物価格の高騰によって、 フィードロットでの収 益は大きく低下しており、 フィードロットへの投資家の多くがビジネスから撤退 しているといわれている。  なお、 フィードロットへの肥育素牛導入が減少する中で、 出荷頭数が導入頭数 を上回っており、 一方で、 飼料の高騰に対処するために、 肥育日数を短めに設定 していることから、 体重の重い肥育素牛を導入する傾向が強まっている。  ちなみに、 7月以降は、 フィードロットからの出荷頭数の減少に伴い、 前年同 月比2.0%から12.1%上回る、 60ドル台前半で推移している。

● 肉牛生産者への様々な支援策


 このような状況下、 USDAは、 肉牛価格の低迷により厳しい経営を強いられてい る生産者に対して、 環境保全を目的として休耕地としている農地の一部で放牧や 採草を行うことを認め、 さらに、 干ばつの被害に見舞われた地域の肉牛生産者に、 災害援助対策用にUSDAが備蓄している飼料穀物を放出するなどの対策を講じてい る。 また、 これらの対策と合わせて、 政府の事業である学校給食事業において、 牛ひき肉の購入を繰り上げ実施するなど、 さまざまな角度から、 肉牛生産者への 支援対策を実施している。
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