タイの鶏肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○タイの鶏肉需給


● 日本への輸出は引き続き振るわず


 タイ大蔵省関税局から公表された統計によると、 冷凍鶏肉の4月の輸出実績は、 94年2月以来の低い水準である10,223トンとなった。 このうち、 主要市場である 日本向けの輸出は、 昨年の12月以来引き続き7千トン台の低い水準で推移してい る。 日本市場においては、 1月から8月までの累計で、 ブラジルおよび米国が輸 出量を伸ばしている一方、 タイ産は、 対前年比で20%近く減少している。

● 順調に伸びるEU向け輸出


 主要輸出先である日本向けが不調な一方で、 牛海綿状脳症 (BSE) の影響によ り鶏肉需要が急増しているEU市場向けの輸出の伸びが著しい。 EUでは、 旧来から のタイ産鶏肉の輸入国であるドイツ、 オランダが、 冷凍鶏肉を主とする鶏肉製品 全体で輸入を伸ばしている。 また、 昨年から本格的にタイ産鶏肉の輸入を開始し たイギリスは、 1月から7月までの累計で前年比10倍以上の増加になったと見込 まれている。  タイからの鶏肉輸出の増加要因は、 EU内における需要の拡大のみならず、 品質 や価格などの問題で、 中国からタイに輸入先をシフトさせる動きが大きく影響し ている。  また、 先月、 EUにおいてタイ鶏肉に課せられる付加関税が17%から10%に引き 下げられることが公表され、 EU向け輸出への追い風はさらに強くなっている。 し かし、 この動きも対日輸出の減少を完全に補うものとはならないとみられている。

● 高値が続く国内鶏肉市場


 9月に入り、 タイの国内市場では鶏肉はやや値を下げているものの、 豚肉の価 格高騰の影響もあって、 依然、 高水準で推移している。 また、 高騰する豚肉価格 を押さえるために一時計画された豚肉の緊急輸入も、 生産者団体などの反対によ り中止を余儀なくされた。 今後、 この状況が続けば、 一部の取引業者は、 販売先 の重点を日本市場から国内市場などへ徐々に移行させるため、 結果的に全体の輸 出量は、 大幅に減少すると見られている。

● 飼料原料の関税割当を見直し


 タイ商業省は、 冷凍鶏肉や冷凍えびの輸出量急減の対策として、 生産コストを 低下させ、 国際競争力を回復させるため、 トウモロコシや大豆ミールなどの飼料 穀物の関税割当について制度の撤廃を含めて見直す方針を固めた模様である。 今 後、 国産品の政府支持価格の設定などを含め、 国内の飼料穀物生産者の保護策に ついて、 農業協同組合省や関係団体と調整が図られるが、 その展開いかんによっ ては、 国内の飼料穀物生産者が大きな打撃を受けることは避けられないものと思 われる。
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