EUの牛乳・乳製品の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○チーズの生産および輸出動向


● 1月から8月までの生産量、 対前年同期比2.5%増


 96年1月から8月までのEU (15カ国) のチーズ生産量 (暫定値) は、 全体で対 前年同期比2.5%増の約388万3千トンとなった。 国別の統計は6月までしか得ら れていないが、 この中でみると、 最も生産が伸びたのはドイツであり、 現状では 95年のチーズ生産量第1位であったフランスよりも多く、 対前年同期比5.1%増 の約77万8千トンとなった。 次いで、 イタリアが4.9%増の約40万3千トンであ った。 また、 イギリスやスペインなどでも生産が増加した。  逆に、 最も生産が落ち込んだのはギリシャであり、 対前年同期比7.8%減の約 5千トンとなった。 次いで、 ルクセンブルクが6.7%減の約1千トンであった。 また、 95年にEUに新規加盟したオーストリアやスウェーデンでも、 生産が減少し た。 表1:96年1月から6月までのEU各国別のチーズ生産量

● 好調な域内需要および域外向け輸出が原因


 96年に入ってから、 EUのチーズの生産量が全般的に伸びた原因としては、 域内 需要および域外向け輸出がともに好調であったことが挙げられる。 域内では、 南 欧諸国、 ドイツ、 オランダをはじめとする需要が好調であった。 また、 域外向け 輸出では、 中・東欧諸国、 旧ソ連諸国、 米国向けが好調に推移した。  なお、 今年に入っても、 域内の生乳生産が比較的順調であったことに加え、 バ ターや脱脂粉乳の価格低迷から、 それらの生産が一部チーズにシフトしたことな ども、 生産を増加させた要因の一つであるとみられる。

● 輸出補助金削減で、 輸出量は減少か


 しかしながら、 チーズの生産増加に貢献した域外向け輸出については、 今後、 困難な状況が予想されている。 それは、 ガット・ウルグアイラウンド合意 (UR合 意) に基づき、 チーズについても、 輸出補助金の対象金額および数量の削減約束 が年次を追って、 段階的に行われていくためである (チーズについては95年から 2000年までの間に、 91、 92年平均をベースにして、 対象金額では36%、 対象数量 では21%の削減が行われる)。  EU委員会は今年に入り、 UR合意に基づく輸出補助金の削減約束を遵守するべく、 相次いでチーズの輸出補助金の引き下げなどを行った。 この結果、 主要品目であ るチェダー、 エダム、 ゴーダの輸出補助金単価は、 96年9月末現在で、 以下の表 のとおりとなった。 表2:チーズの輸出補助金単価  このEU委員会の措置に対し、 輸出業者からは、 このままではEUのチーズの輸出 競争力が落ち、 オーストラリアやニュージーランドに輸出シェアを奪われるとの 不満の声が上がっており、 実際、 南アメリカなどの一部地域では、 既にその影響 が出始めている。 また、 チーズの域外向け輸出量の減少は、 今後、 チーズの域内 価格にも影響を及ぼすとみられると、 その動向が注目されている。
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