EUの豚肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○豚肉価格が過去5年間の最高値を記録 (デンマーク)


● BSE問題が追い風に


 96年9月のデンマークの豚枝肉卸売価格 (市場参考価格) は、 ここ5年間で最 高値となるキログラム当たり12.31クローネ (約237円) を記録した。 同国の豚肉 価格は、 今年に入り上昇傾向で推移していたが、 特に4月以降は前年同月比で10 %を超える高値が続いている。  これには、 今年上半期の対日輸出の増加等、 いくつかの要因が挙げられるが、 牛海綿状脳症 (BSE) 問題によるEU全域での牛肉離れと豚肉消費の急増が最も大 きく影響したとみられている。

● 急増するドイツ向け生体輸出


 EU域内の豚肉平均卸売価格も、 BSE問題の発生後は記録的な高水準で推移して おり、 域内市場における主要な豚肉供給国であるデンマークにとって、 予想外の 輸出機会が到来したといえる。  なかでも、 隣国ドイツへの生体豚輸出が急増しており、 デンマークの業界関係 者は、 現在のペースで行くと、 96年通年での全輸出頭数は前年より5割以上増加 して70万頭を超えるとしている。  ドイツは、 BSE問題の長期化に伴い、 牛肉離れと豚肉消費の増加が最も顕著に 現れているとされ、 この夏には、 史上初めてキログラム当たりの豚肉価格が牛肉 (経産牛) 価格を上回り、 現在では、 デンマークをしのぐ高水準に達している。 このため、 現在のドイツの豚肉市場は、 デンマークにとって魅力的なものとなっ ている。

● と畜部門に集荷減少の反動も


 デンマークにとって、 域内輸出の拡大は、 近年にない豚肉の高価格をもたらし た一方で、 と畜部門では、 集荷頭数の減少という思わぬ反動も出現した。  デンマークの肉豚生産者は、 その多くが協同組合に属していることから、 契約 により、 肥育終了後の肉豚の出荷先は国内のと畜場に限定されている。 したがっ て、 ドイツ向けの生体輸出の多くは、 出荷先に制限のない子豚であるが、 多数の 肥育豚も輸出されていると一部では指摘されている。 このため、 と畜場によって は、 集荷頭数が減少して経営に悪影響を及ぼし始めているとし、 生体輸出の急増 を憂慮する声も上がっている。

● 高値を反映し生産は拡大基調


 先般発表された96年8月期のデンマークの豚センサスは、 総飼養頭数はほぼ前 年同期並みの約1千9万頭となった一方で、 繁殖用雌豚頭数は1.9%、 うち未経 産雌頭数は4.1%と、 それぞれ前年同期より増加しており、 同国の肉豚供給が今 後増加傾向にあることを示すものとなった。 この傾向は、 デンマークの肉豚生産 者の大勢が、 現在の価格状況を長期的なものと予想していることを裏付けるもの ともいえよう。  なお、 今回のセンサスに基づき、 96年通年のと畜頭数は、 前年比1%増の1千 857万頭程度になると予測されている。 表:デンマーク8月期豚センサス
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