EUの農業後継者対策



● 経営者の4分の1が65歳超


 EU委員会は、 農業経営者の高齢化が進む中、 「ヨーロッパ農業における若年農 業者と後継問題」 と題する報告書 (調査対象年次89年/91年、 旧EU12カ国) を発 表した。 これによると、 農業者の平均年齢は近年特に上昇傾向にあり、 53.6%が 55歳以上となっている他、 農村地域からの女性の流出も目立っている。  また、 農業経営者 (総農家数850万戸) の年齢構成をみると、 その4分の1が6 5歳を超えているのに対して、 若年農業経営者 (35歳未満) は8.3%にすぎず、 そ の多くが酪農、 園芸に従事している。 一方、 年齢構成別の耕地面積をみると、 若 年農業経営者の平均は19.4ヘクタールとなっており、 全農家平均の15ヘクタール を大幅に上回っている。

● 若年層に不利な就農環境


 こういった状況のもとで、 就農者の確保が農業の維持活性化に不可欠となって いるが、 就農を目指す若年層にとっては、 土地等の生産手段の購入や相続等に係 る就農資金の調達が大きな障壁となっている。  また、 生乳生産クオータ制度、 繁殖雌牛奨励金制度、 めん羊奨励金制度では個 人別の枠が設定されており、 就農者に対するより円滑な配分も課題とされている。

● 既に2百億円を超える資金援助を実施


 このため、 EUでは、 現在、 若年層 (40歳未満) の就農資金援助策として、 1人 当たり上限1万5千ECU (約211万円) の一時金交付 (利子割り戻しに代替可) や、 就農後の新規投資に対する25%の助成を実施してきている。 94年の一時金交付対 象は2万3千人、 新規投資助成対象者は8千5百人、 財政負担は93年で1億8千 3百万ECU (約258億円) に達している。  また、 若年農業者のための職業訓練に対して、 1人当たり1万5百ECUの助成 を行っており、 この93年の予算額は870万ECUとなっている。  この他、 間接的な新規参入者対策として、 早期離農に対する助成が行われてい る。 これは、 経営者 (55歳以上) が離農する場合、 一時金の交付などが行われる もので、 ルクセンブルク、 オランダ、 イギリス、 オーストリア、 スウェーデンを 除く10カ国が実施している。

● 止まらぬ高齢化で、 今後に課題


 このような措置にも関わらず、 高齢化は進んでおり、 構造対策の一層のてこ入 れが課題となっている。 このため、 EU委員会は、 就農助成については、 現行制度 を十分活用するよう加盟国に呼びかけるとともに、 1) 環境関連に重点をおきつ つ、 地域のニーズにあわせた職業訓練の見直し、 2) 若年農業者に経営を委譲す る早期離農に対する優遇措置の導入 (例えば、 奨励金の増額等)、 3) 生産に関す る各種個人枠制度の運用に当って、 総量の増加を伴わない就農者枠の恒常的確保 と円滑な配分、 といった今後の課題を掲げている。  また、 各国独自の措置として、 1) 農業者の相続人に対する課税支払いの長期 化、 2) 経営の委譲に当って、 就農期間の制限を課す等を条件とした税金控除や 減税措置の導入、 3) 農村生活を経験したことのない若年層への就農促進などが 課題とされている。
元のページに戻る