農家の負債総額が過去最高に (豪州)



● 95年6月末で180億豪ドル


 豪州農業資源経済局 (ABARE) によると、 95年6月末時点の豪州の農家の負債 総額は、 過去最高の約180億豪ドル (1兆5千3百億円) を記録した。 これは、 豪州の94/95年度の農業粗生産額234億豪ドル (1兆9千9百億円) の76%に相 当する。 また、 1戸当たりの平均負債額は15万5千豪ドル (1千3百万円) とな っている。

● 干ばつ被害や農産物価格の低迷が背景に


 ABAREは、 農家の負債総額が過去最高を記録した理由として、 94/95年度に、 干ばつ被害が悪化して穀物生産が大幅に減少したことや、 牛肉、 羊毛の国際価格 が低迷したことから、 農家収入が大幅に減少し、 この結果、 経営継続のための運 転資金や生活資金に充てるための短期の借入金が増加したことを挙げている。  なお、 酪農については、 干ばつの被害をそれほど受けることなく、 経営状況は 比較的順調であったが、 輸出拡大により将来の経営環境がさらに良くなるとの見 通しから、 農家の規模拡大意欲が強く、 農地購入や搾乳施設の近代化、 大型化な ど新たな整備投資が活発になった結果、 長期の借入金が増加したものとみられて いる。

● 負債額および経営種類別の動向


 負債額別の農家割合をみると、 負債なしの農家が全体の23%を占める一方で、 20万豪ドル (1千7百万円) 以上の農家も22%を占めた。  農家の経営規模が大きくなるほど負債額も多額になる傾向があり、 また負債な しの経営者は比較的高齢者が多いのに対し、 逆に負債額の大きい経営者は若い年 齢層に多い。 これは、 若い経営者ほど経営を発展させる傾向が強く、 生産拡大や 生産性向上を目指して設備投資を積極的に行うためとみられる。  また、 経営種類別の特徴をみると、 負債なしは肉牛経営が最も多く全体の35% を占め、 次いで羊経営が26%、 酪農経営が17%、 穀物経営が16%となっている。 一方、 負債額20万豪ドル以上は、 穀物経営が37%と最も多く、 次いで酪農経営が 25%、 羊経営が21%、 肉牛経営が12%となっている。

● さらに増加が予測される負債総額


 ABAREは、 今後、 海外市場を中心に農産物需要の拡大が期待されることから、 全般的に農家の規模拡大意欲は強く、 新規投資の増加などにより、 農家の負債総 額はさらに増加すると予測している。  しかしながら、 比較的金利水準の高い豪州では、 借入金の増大は金利負担額の 増加を招き、 経営を圧迫する要因となりかねない。 従って、 今後、 農業経営者は、 経営管理能力を高めるとともに、 国内外を問わず農産物需給の情報収集に力を入 れ、 市場動向に的確に対応していくことがますます求められることになると考え られる。
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