わが国財界の経済交流・協力案件に農業分野が浮上 (中国)



● 経済使節団と経済担当副首相との会談で浮上


 先ごろ訪中した日中経済協会の経済使節団は、 9月19日、 北京で、 中央政府の 経済問題担当責任者である朱副首相と会談した。 会談では、 当面の経済情勢や経 済交流・投資問題などの広範な分野での意見交換が行われた。  従前、 この種の意見交換・論議では、 その性格上、 一般産業分野におけるテー マが中心であったが、 今回の会談では、 特に農業の基盤整備や内陸部の地域開発 なども取り上げられた模様である。  従来、 農業の基盤整備や技術援助などは、 政府開発援助やNGOなどを軸として 行われてきたが、 今回の出来事は、 わが国財界が、 中国との経済交流を一層進め るに当たって、 中国側のマクロ政策における風向きの変化を、 正面から受け止め る必要性を認めるに至った転機として注目される。

● 中央政府の経済成長不均衡是正目的がその背景に


 こうしたテーマが取り上げられた背景は、 改革・開放によって、 沿海部の商工 業を中心に急成長を遂げた中国が、 他方で健在化し始めた農業部門の立ち遅れや 内陸部の後進性といった不均衡是正を求める方向へ、 本格的に経済の舵取りを修 正しつつあることを反映したものであると受け止められている。  なお、 朱副首相は、 今年春、 全国人民代表大会の前にもマクロ経済目標を達成 するための重要方策として、 農業テコ入れを重視する姿勢を報道関係者に明らか にしている。 また、 4月に訪中した経団連代表団に対しても、 中国側は、 目下の 重要課題が農業問題と人口問題にあることを強く示唆したと伝えられている。  したがって、 今回、 農業部門のテーマが取り上げられたことは、 わが国の経済 界が、 成長部門への投資を主体としたこれまでの路線の変更を、 強く求められて いることを象徴する出来事といえよう。

● 農業発展のための具体的な懸案・関心事項


 92年の改革・開放政策の本格化以降、 沿海部の商工業を中心に躍進をとげた中 国は、 その一方で立ち遅れの目立ってきた農業部門へのテコ入れを、 95年から本 格化させた。 そうした中、 中国側の、 農業発展のための具体的な懸案事項や関心 事項は、 次のとおり整理できる。 ●新規農地の開拓、 近代的な大規模農場の開発  −生産モデル事業の推進や外国資本・技術導入促進などを含む ●水資源の開発・高度利用の促進  −未利用の水資源の活用拡大のための開発  −灌漑システムの普及促進 ●農業関連産業の育成・近代化  −農業機械、 化学肥料、 配合飼料産業の育成 ●バイオテクノロジーの振興  −高収穫品種などの開発、 普及 ●流通基盤、 流通システム等の整備・拡充  −鉄道、 道路網、 内陸水運網、 港湾施設の整備  −現物市場、 先物市場の整備及び市場情報の提供の効率化・近代化  −備蓄・保管施設の近代化、 増設 ●環境改善等  −砂漠化、 土壌流失、 土壌汚染等の防止又は改善復旧対策  −治山治水事業  −地下水面の低下、 水資源の枯渇傾向対策 ●(参考) 三峡ダムの建設関連プロジェクト  −水資源の開発、 治水、 水運流通網の整備の面で、 中国側の期待が特に大きい  なお、 中央政府は、 昨年、 外国からの投資を優先的に受け入れる分野を定めた が、 農業部門は、 優先的な投資対象に挙げられている。
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