EUの牛乳・乳製品の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○チーズの生産動向



96年の生産量は前年比3. 9%の増加


 96年におけるEUのチーズ生産量 (暫定値) は、 前年比3.9%増の581万5千トン
と好調さを維持した。 96年代に入ってからのチーズの生産は、 域内需要、 域外輸
出ともにおおむね順調に推移したことから、 年率2〜4%の割合で拡大したが、 
96年は引き続き需要が好調であることに加えて、 生乳生産が前年よりわずかに増
加したこともあって、 やや高めの増加率となった。 

 EUのチーズは、 それぞれの国の伝統に根差していることから、 極めて多様なタ
イプが生産されているが、 大まかなタイプ別の動向をみると、 ハードタイプおよ
びソフトタイプの生産がほぼ横ばいであるのに対し、 フレッシュタイプ、 セミハ
ードタイプの伸びが目立っている。 

 なお、 国別には様相が異なるが、 全生産量のうち約9割がEU域内で消費され、 
残る1割が輸出に向けられている。 

トップの座はフランスからドイツへ


 国別生産量とみると、 ドイツが前年比5. 4%の153万トンと好調な伸びを示し、 
EU最大のチーズ生産国となった。 これに対して、 フランスは1. 0%の増加にとど
まり150万トンには達したものの、 わずかの差でトップの座をドイツに譲った。 

  「チーズ王国」 であるフランスでは、 一人当たりの年間消費量が20kgを超え、 
EU平均の15kgを大きく上回っており、 すでに国内市場は成熟傾向にあると言え
る。 一方、 ドイツは国内市場が成長過程にあることに加え、 輸出も順調に拡大し
たことから、 生産量はここ5年間で23%も増加した。 なお、 両国の合計生産量は、 
EU全体の過半のシェアを占めており、 最も重要な生産地域を形成している。 

 さらに、 イタリアが4. 9%増の82万2千トン、 オランダが10.6%増の70万4千
トンなど、 他の国々でも順調に伸びたことから、 EU全体のチーズ生産量を押し上
げる結果となった。 

デンマーク、 北欧諸国は減少


 これに対して、 デンマークの生産量は、 主に中東向けフェタチーズの輸出が激
減 (73%減) したことや、 日本市場でオセアニア産チーズとの競合が激化したこ
となどから、 4. 1%減の29万8千トンに減少した。 さらに、 スウェーデン、 フィ
ンランドの北欧諸国の生産量も、 EU加盟により域内の競合にさらされたことから
減少した。 

表1 96年のEU国別チーズ生産量

 資料:ZMP
 注1:数値は暫定値
 注2:ヤギ、水牛の乳を原料としたものを除く。

フランスでもハードタイプの伸びがまさる


 首位の座を明け渡したフランスの96年の生産動向についてタイプ別にみると、 
熟成させないフレッシュタイプのチーズが51万2千トンと全体の34%を占め最も
多く、 次いでカマンベール、 ブリーなどのソフトタイプが、 やや生産を減少させ
たものの45万8千トンと約3割を占めた。 一方、 エメンタールなどのハードタイ
プは29万1千トンと2. 1%増加し、 フレッシュタイプ、 ソフトタイプに比べ高い
伸びを示した。 

 フランスは、 フレッシュ、ソフトタイプが全体の約3分の2を占めるソフト「王
国」 であるが、 近年の生産増を支えてきた主力のフレッシュ、 ソフトタイプの生
産が、 前年比0. 4%増とほぼ横ばいとなったことが、 ドイツに一歩譲った要因と
も言える。 

表2 フランスのタイプ別チーズ生産量

 資料:ZMP他

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