EUの豚肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○EU主要国の飼養頭数が軒並み増加



ドイツ、 オランダが増加に転ずる


 96年12月期のEUの主要豚肉生産国の豚センサスによれば、 各国の豚の総飼養頭
数は、 軒並み増加となった。 

 このうち、 EU最大の豚肉生産国であるドイツと、 有数の生体豚の輸出国である
オランダの総飼養頭数は、 近年、 環境関連の規制強化などから減少傾向が続いて
いたものの、 今回のセンサスでは、 それぞれ、 対前年同期比1. 6%増の約2,4 12
万頭、 2. 1%増の、 約1, 425万頭と増加に転じた。 

 また、 第3位の生産国 (96年は、 約215万トン:暫定値) であるフランスも、 3. 
2%増の約1,500万頭となった。 さらに、 域内外への最大豚肉輸出国であるデンマ
ークでは、 3. 5%増の約1, 108万頭となった。 

 このように、 主要国の豚の総飼養頭数が拡大した原因は、 96年3月の牛海綿状
脳症(BSE) 問題の発生により、 域内の牛肉消費が豚肉にシフトして需要が急増し
たためとみられている。 これにより、 肉豚価格が急騰して秋口まで高水準で推移
したことから、 肉豚生産者の増頭意欲が刺激される結果となった。 

表1 主要国の豚の総飼養頭数(12月期)

 資料:MLC「European Market Survey」

 

繁殖用雌豚の飼養頭数も増加


 また、 これらの国では、 繁殖用雌豚の飼養頭数についても押しなべて拡大傾向
にあり、 今後、 肉豚供給がさらに増加する傾向に向かうことを示している。 ドイ
ツの繁殖用雌豚頭数は、 0. 5%増の約254万頭、 オランダは2. 2%増の約151万頭、 
フランスは、 1. 3%増の約150万頭となった。 また、 デンマークは、 6.5%増の約
122万頭と大幅な増加となった。 

 さらに、 イギリス食肉家畜委員会 (MLC) の報告によれば、 上記4カ国以外で
も、 豚肉生産量がフランスに匹敵するスペインでは3. 0%、 イギリスでは3. 0%
と、 それぞれ繁殖用雌豚の飼養頭数が増加しており、 EU (15カ国) でも、 2. 0%
の増加となっている。 

表2 主要国の繁殖用雌豚の飼養頭数(12月期)

 資料:MLC「European Market Survey」

 

デンマークが域内の豚肉需給の緩和に貢献


 ドイツ市場価格情報センターの予測によれば、 このような状況を反映して、 97
年のEU (15カ国) の豚のと畜頭数は、 各国とも軒並み増加して、 対前年比1%増
の約1億9, 100万頭になると見込んでいる。 特に増加が予測される国としては、 
ベルギー、 ルクセンブルクやフィンランドなどである。 

 ただし、 現在、 ドイツ、 オランダでは、 97年1月の豚コレラの発生により、 防
疫上のとう汰措置として、 肉豚の介入買い入れが行われており、 両国の食用の豚
肉供給量は、 今後、 減少することが予想される。 

 しかしながら、 その一方では、 先ごろ発表された97年2月期のデンマークのセ
ンサスによれば、 繁殖用雌豚は、 6.1%増の約120万頭となっており、 強い増頭意
欲が継続していることがうかがわれる。 したがって、 同国の肉豚供給が、 今後も、 
さらに増加傾向に向かうことは明らかであり、 域内の豚肉需給の緩和に貢献する
ものと考えられる。 

元のページに戻る