台湾の豚肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○口蹄疫、 台湾に上陸



発生は76年ぶり


 わが国が輸入する豚肉の4割 (チルドは5割弱) を供給をしてきた台湾が、 口
蹄疫の発生という重大な事態に見舞われている。 

 台湾の大手・中堅輸出業者で組織する台湾区冷凍肉類工業同業公会が台湾豚肉
の販促キャンペーンを行っていたさ中の3月19日、 行政院農業委員会 (農業省に
相当) は台湾北西部で口蹄疫の発生を確認、 翌20日、 直ちに豚肉 (冷蔵・冷凍) 
の輸出を当面停止することを通告した。 これを受けたわが国政府は、 口蹄疫の潜
伏期間等を考慮し、 2月21日以降に、 台湾から船積みされた偶蹄類動物及びその
肉等について、 輸入禁止措置を実施した。 なお、 台湾当局はすでに、 19日以降、 
豚肉輸出の停止措置を実施している。 

 台湾での口蹄疫発生は76年ぶりであるが、 台湾政府は、 感染性が極めて強いそ
の性質から、 緊迫した状況の中で、 防疫、 撲滅対策に全力で取り組んでいる。 

流行地域が拡大


 台湾政府からの通報によると、 口蹄疫の発生が最初に確認された場所は台湾北
西部の新竹県2件、 桃園県1件の計3件であったが、 その後、 被害地域は西岸各
県に急速に拡大した。 その後も被害は台湾のほぼ全土に拡がり、 4月14日現在、 
東部の宜蘭、 花蓮、 台東と離島の澎湖を加えた4県以外の全ての地域で発生が確
認されており、 発生農場数は3, 420農場に及んでいる。 また、 口蹄疫に感染した
豚の総数は54万頭に上り、 殺処分された豚は133万頭に達している。 また、 現時
点で、 牛や山羊など他の偶蹄類からの発生は報告されていない。 

 なお、 口蹄疫ウィルスのタイプのついては、 当初、 複数の存在が報じられたが、 
英国の世界診断センターによりO−1型のみであることが確認された。 

豚肉産業に甚大な損害


 口蹄疫発生による養豚・豚肉業界の被害がどれほど拡大するかは予測できない
が、 経済建設委員会主任委員は、 3月27日、 閣議において国内向けの肉豚出荷が
15%減少すると報告している。 また、 今回の禁輸措置 (輸出の9割強を対日輸出
が占める) による損失を少しでも食い止めるため、 政府は在外の代表部42ヶ所を
通じて、 台湾の豚肉輸出の可能性を調査していると伝えられる。 

 なお、 27日までの政府筋試算によると、 口蹄疫による国内産業の損失は最大で
2, 500億元 (1元=4. 5円) に上り、 この損失により、 経済成長率が0. 3%低下
するとともに、 5万人の雇用に影響が及ぶとしている。 

肉豚価格は大暴落


 口蹄疫の流行拡大は、 肉豚の卸売価格にも極めて大きな影響を与えている。 3
月の肉豚卸売価格を見ると、 口蹄疫発生確認の19日までは、 全ての卸売市場 (22
市場) で4千元 (肉豚100Kg当たり) 以上の水準で推移していた。 しかしなが
ら、 政府が発生を公表した3月20日を境として、 全市場で急激な下降に転じ、 翌
21日には、 非汚染地域の市場を除いて、 千元台にまで暴落した。 台湾の肉豚生産
コストは4千〜4千5百元であることから、 コストの3分の1に近づく大暴落と
いった状況になったことになる。 

 なお、 政府は、 一部の非汚染地域を除き、 西部地域に点在する17ヶ所の肉豚卸
売市場を24日から28日までの5日間休業し、 徹底して消毒を行った。 29日から取
引が再開されたが、 出荷される肉豚には衛生証明書が添付されることになったこ
と、 また、 5日間の休業によって取引頭数が減少したことなどから、 肉豚価格は、 
一時的に持ち直す傾向を示した。 しかしながら、 4月に入ると再び非汚染地域の
市場を除いて、 千元台の水準で推移している模様である。 

政府は撲滅対策と被害救済に努力を傾注


 政府が口蹄疫発生直後に執った国内措置は次の4点である。  (1)発生農場にお
ける家畜移動の禁止。 (2)と畜場でのと体検査の強化。 (3)患畜及び疑似患畜の焼
却・埋却措置。 (4)ワクチンの緊急輸入によるワクチン接種。 

 撲滅対策としては、 ワクチン接種と感染豚の淘汰を並行して行うこととしてい
る。 また、 生産者及びパッカーの救済策としては年利3%、 償還期限3年の低利
融資を行うことを打ち出しており、 パッカーが農家から肉豚を購入する際の価格
は、 100Kg当たり2,600元を下回ってはならないこととしている。 このうち、 2千
元については政府より低利融資が行われることとなっている。 


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