専門委員会がBSE関連の調査報告を発表 (EU)



科学獣医委員会、 牛乳の安全性について報告


 EU委員会は、 3月4日、 牛海綿状脳症 (BSE) の症状が出ている牛の乳でも、 B SEの感染源にはならず、 安全であるとした、 科学獣医委員会 (ScVC) の報告を発 表した。  ScVCはEU委員会の専門技術委員会の一つであり、 昨年夏、 イギリス政府がBSE の母子感染成立を示唆する発表を行なったことを受けて、 牛乳が母子感染の原因 となるかどうかを検証していた。 今回の報告は、 これまでの疫学的所見や感染実 験などのさまざまな研究報告について、 各国から選出された獣医学や公衆衛生学 などの専門委員が検討して取りまとめたものであり、 EUの正式見解となるもので ある。  注目すべき点は、 BSEにかかった牛の乳がBSEの感染源になるかどうかであるが、 この報告によれば、 (当然ながら検出可能な水準という注釈がついているにして も) いずれの泌乳期においても感染性はないとされている。  同報告は、 初乳 (分娩前後の数日間分泌される乳で、 産子に対する免疫力の付 与等の特別な役割を有する。 食用には供しない。 ) に関しては、 実験が行われて いないため感染性を明確に否定はしていない。 ただし、 イギリスでBSE にかかっ た乳用牛の産子約7万頭 (当然、 初乳は飲んでいると想定される) についてみる と、 (問題となった) 飼料により感染したと試算される頭数よりも、 実際の発症 頭数が少ないことから、 初乳は発生の増加にはつながってないとし、 初乳のリス クは無視できる程度と述べている。

BSE感染牛の乳は従来通り食用禁止に


 このように、 牛乳がBSEの感染源となった可能性は、 ほぼ全面的に否定された。 ただし、 現実問題として、 BSEの症状を表している牛の乳の取扱いについては、消 費者の信頼を維持するためもあって、 現状の食用禁止措置を続けるよう求めてい る。 さらに、 具体的には、 BSEの症状を表した牛の乳 (初乳を含む)、 並びにそれ を用いて製造された乳製品は、 食用か否かを問わず、 使用を禁止し、 廃棄処分と するよう求めている。

母子感染についても疑問符を提示


 なお、 同報告は、 母子感染論そのものについても、 それが成立しないか、 ある いは起こっていても非常にまれであるとの裏付けがあるとして、 疑問符を投げか けている。 さらに、 上記のイギリス政府の発表についても、 母子感染と思われる 発生例は、 未知の感染源によるものや、 飼料を介しての感染に対する感受性の違 いで説明ができる可能性があると述べている。 これらの点については、 イギリス 政府の母子感染に関する最終報告を待って検討が行われるものと思われるが、 そ の最終報告の発表時期は、 今のところ未定となっている。
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