96年の農業総収入は引き続き上昇 (EU)



過去20年間で最高の水準を記録


 欧州統計局は、 このほど96年の農業総収入 (純所得:補助金を含む) の速報値 を発表した。 これによると同年の農業総収入は、 前年を4. 8% (物価調整済み) 上回り、 89年から91年のEU (15カ国) の農業総収入を100とすると、 平均で118.9 となるなど、 過去20年間で最高の水準となった。  96年の農業総収入が高い伸び率を示した要素として、 同局は、(1)域内の天候が 比較的良好で、 穀物などの生産量が大幅に増加したこと、 (2)牛海綿状脳症(BSE) 問題で牛肉価格が影響を受けた一方で、 豚肉、 羊肉および家きん肉価格が上昇し、 最終的な畜産物の生産額がわずかな減少にとどまったこと、 (3)補助金収入が加 盟国間で差はあるものの、 全体としてわずかながら上昇したこと、 などを挙げて いる。 なお、 飼料、 燃料、 器材などの価格はすべて前年を上回った。

畜産物の総生産額は、 わずかに減少


 畜産物の総生産額は、 生産量が前年並みであったものの、 価格がわずかながら 下回った (−0. 6%) ことから、 前年よりわずかに減少 (−0. 4%) した。  畜産別に見ると、 肉牛部門では、 生産量がBSE対策に伴う牛のとう汰政策の実 施により前年を2. 1%下回り、 かつ、 価格も需要の減退により、 前年比14. 1% の値下がりと大幅に低下した結果、 生産額がイギリスの36. 6%減を筆頭に全加 盟国で前年を下回った。  また、 養豚部門では、 生産量は前年と大きく変わらなかった (0. 9%増) もの の、牛肉からの代替需要によって価格が前年比9. 4%の値上がりとかなり上昇し た結果、 生産額が同10. 6%増とかなり増加した。  生乳部門は、 生産量は前年と同水準であったものの、 価格は2. 7%の値下がり と前年を下回ったことから、 生産額は前年比2. 3%減となった。

加盟国別では、 明暗が分かれる


 一方、 96年の農業総収入を加盟国別に見ると、 良好な天候条件により農業総収 入が増加した国や、 BSE問題の影響により減少した国があるなど、 その国の農業 構造の特徴によって明暗が分かれた。  最も農業総収入が増加した国は、 過去4年間の干ばつの後を受けて穀物などの 生産が回復したスペインであり、 前年比21. 4%増と大幅な増加となった。 この ほか、 生産コストの削減効果がみられたフィンランドが前年比9%増、 肉豚、 卵 の価格が好調だったベルギー (6. 9%増) など9カ国で農業総収入は前年を上回 った。  これに対し、 オーストリアなど5カ国の農業総収入は前年を下回った。 このう ち、 BSE問題で最も影響を受けたイギリスは、 補助金収入の増加や他の畜産物価 格が好調であったことなどにより、 農業総収入の減少は4. 8%にとどまっている。
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