中国、 WTOへの早期加盟に向けて自由化案を提示



加盟交渉で企業の貿易 「権」 の自由化案を提示


 中国は、 全国人民代表大会開催中の去る3月上旬、 ジュネーブでの世界貿易機 関 (WTO) 加盟交渉で、 懸案となっていた、 加盟の前提条件となる貿易の自由化 問題などについて、 交渉相手国に対して重要な提案を行った。  この提案で特に注目すべき点は、 企業の輸出・輸入に関する権利を、 2000年ま でに 「自由化」 する点にある。 なお、 輸出入自由化への方向付けについては、 同 時進行していた全人代で承認された、 対外経済政策の重点項目にも盛り込まれて いる。 中国では、 計画経済の円滑運営や貿易秩序の維持、 また貿易取引上の交渉 力強化の見地などから、 改革・開放政策導入後も、 原則として輸出・輸入に関す る権利が、 特定の企業に付与されてきた。 この間のWTO加盟交渉では、 それが貿 易制限的要素となることから、 主要交渉相手国からの批判の的となり、 もう一つ の焦点である知的所有権保護の問題と共に、 加盟交渉を長びかせる原因となって きた。

APEC閣僚会議でも関税率の引き下げを約束


 92年から本格化した改革・開放政策で経済的成果を収めた中国は、 次のステッ プとして、 (1)国内的には国有企業の改革や沿海部と内陸部の経済格差の是正を、 また、 (2)対外政策面では国際社会での地位向上を、 最優先課題としている。 今 回の自由化提案は、 WTO加盟促進のための 「譲歩」 ではあるが、 別の見方では、 新興企業の競争力が急速に高まったことから、 将来的にも輸出入権を特定企業に 絞ることが、 さらなる競争力向上や輸入コストの軽減上は、 かえって好ましくな いという判断が働いたものとみることが出来る。  また、 昨年11月のアジア・太平洋経済協力会議 (APEC) 閣僚会議では、 平均関 税率を、 2000年までに段階的に15%まで引き下げることや、 金融業務の対外開放 促進を表明している。 なお、 中国は、 既に、 昨年4月には、 関税率を大幅に引き 下げて平均23%としているが、 これら一連の自由化推進姿勢は、 経済運営・対外 競争に対する自信を窺わせると共に、 WTO加盟交渉の促進を念頭において、 国際 社会でのアピールを狙ったものと考えられる。

農産物貿易の活性化・安定化につながるか


 中国は、 飼料穀物では、 輸出国として国際市場に影響を与えてきたが、 需給の 逼迫により94年12月には、 一転して、 輸出を停止して輸入国に転じたことから、 国際需給の不安定要因となってきた。 また、 畜産物の対日輸出では、 ブロイラー が95年から第一位となり (約20万トン) 、 かつ、 ほぼ唯一の冷蔵品の輸出国であ ることも含めて、 極めて影響力の強い国となっている。 (なお、 世界最大の生産 量を誇る豚肉は、 検疫上の問題から冷蔵・冷凍肉は対日輸出できないが、 世界で は第五位の豚肉輸出大国である。 )  したがって、 今後の貿易自由化の流れの中で、 特に注目すべきものは穀物と鶏 肉である。  穀物部門では、 94年の突然の輸出停止により、 契約した輸入業者が混乱に陥っ た。 食糧の安定供給 (飼料穀物を含む) を最重要視する中央政府は、 貿易権の自 由化後も食糧の輸出入では許可制を維持する可能性がある。 しかしながら、 輸出 入企業が多様化すれば、 貿易規制の緩和にもよい影響が及び安定化につながるこ とが期待される。  一方、 鶏肉については、 現在、 最も 「自由化」 の進んだ品目の一つであること から、 輸出入権自由化の影響は、 比較的少ないと考えられる。 しかしながら、 輸 出企業がさらに増加すれば、 交易上の競争関係がより高度化し、 中国の独壇場で ある冷蔵品の取引も含めて、 その貿易取引が一層活発化する可能性が考えられる。
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