鶏肉輸出振興策を活発に展開 (タイ)



新たな輸出先の開拓が課題


 2月下旬に発表された商務省の貿易統計 (速報) によると、 96年のタイ輸出総 額は、 労賃のアップや上半期まで続いたバーツ高による全般的な国際競争力の低 下により輸出数量が伸び悩んだことから、 対前年比でわずか0. 4%の伸びにとど まった。 昨年の伸び率が24%であったことからみると、 大幅に低下したことにな る。  一方、 鶏肉輸出についてみると、 最新の95年実績では、 総輸出量は約15万トン となっているが、 そのうち12万トン弱が日本向けで、 依然として圧倒的なシェア を占めている。 また残りのうち2万トン弱がEU向けで、 その他が東南アジアや中 近東向けとなっている。 近年、 中国や米国との競争が激化して対日輸出が減少し たことから、 日本向けでは鶏肉調整品の開発努力が行われているが、 新たな輸出 先の開拓が、 タイ鶏肉業界の最大の課題となっている。

拡大を続けるEU向けの輸出


 こうした中で、 タイ畜産開発局は、 このほど、 EUへの輸出基準を満たしている 工場として、 新たに4社の処理場を公表した。 これにより、 EUへの輸出が可能な 処理場は、 合計21ヶ所となる。 新たに認定された4処理場に対しては、 近くEUか ら係官が派遣され、 実地検査が行われる予定である。 EU向け輸出量は、 ここ数年 増加しており、 95年が1万6千トン、 96年は1万8千トン、 97年は2万トンに達 すると予想されている。

カナダ向け加工鶏肉の輸出再開を準備


 一方、 加工鶏肉に関しては、 カナダ首相の訪タイを契機に、 同国に向けた輸出 再開の準備を進めている。 このほどカナダの係官がタイの食鶏処理場8カ所を検 査したが、 タイ商務省によれば、 カナダの衛生基準に沿った若干の修正が要求さ れた程度で、 好印象を与えた模様である。 ちなみに、 カナダ向けの加工鶏肉輸出 は、 タイの鶏肉生産施設が同国の求める衛生基準に合致せず、 あるいは仕様書通 りの内容でなかったと指摘されて中断されていた。

豪州市場へも参入努力


 さらに、 加工 (加熱) 鶏肉に関しては、 これまで輸入を拒否してきた豪州に対 しても、 鶏肉業界が地道な努力を重ねている。 このほど開催されたフィッシャー 豪州副総理との第1回定期会合の成果を踏まえて、 4月上旬にも豪州側係官によ る食鶏処理場の実地検査が行われることになっている。  豪州は、 鶏肉の輸入に伴う病原菌汚染を警戒している。 このため、 タイ産鶏肉 の受け入れに際しては、 厳正な基準を設定するべく、 第3国機関に調査を依頼し た。 豪州政府の掲げた輸入解禁条件は、 (1)病原性微生物が死滅するような加熱 処理を行うことと、 (2)獣医師及び豪州養鶏協会による食鶏処理場の実地検査を 実施すること、 である。 このうち、 第1の条件に関しては、 イギリス中央獣医研 究所による調査によって、 少なくとも80度で15分間の加熱が必要という結論に至 ったようであるが、 第2の条件の方は、 豪州養鶏協会が市場開放政策に批判的で あることから、 実地検査の日程が未定となっている。
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