飼養技術向上と負債問題処理が酪農発展の課題 (インドネシア)



酪農振興政策で生乳生産が拡大


 インドネシアの酪農は、 生乳の自給率向上と急速な人口増加に対応する雇用機 会の創出を目的として、 73年からの政府の第3次5カ年計画により振興が行われ 発展してきた。 その後、 政府を介した国際機関等による融資事業などもあり、 乳 牛の飼養頭数は、 順調に増加した。 89年以降についてみると、 乳牛の飼養頭数は、 年平均で5%以上増加し、 生乳生産量も、 年平均で約3. 5%増加している。

零細経営と管理技術の不足が問題


 しかし、 順調に発展しているように見えるインドネシア酪農であるが、 実際に 抱える問題は多い。  第一に、 経営規模が小さいことが挙げられる。 政府は、 酪農振興を進める中で、 より多くの雇用機会を創出するために、 酪農家の経営規模を制限する規制を行っ た。 このため、 現在でも、 ほとんどの酪農家が、 飼養頭数わずか3〜4頭の零細 経営となっている。  第二に、 生産性の低さが挙げられる。 1日1頭当りの乳量は、 わずか9〜10リ ットルと非常に低い水準となっている。 同国においては、 比較的冷涼な高地にお いて酪農が行われているため、 他の熱帯地域とは異なり、 ホルスタイン種が主に 飼養されている。 豪州、 ニュージーランド、 米国から多くの乳牛が輸入され、 輸 入頭数は、 92年までの10年間だけでも12. 5万頭に達した。 しかし、 一般に酪農 家の飼養管理技術が低いことから、 これらの輸入牛やその産子の能力を十分に生 かしきれていない状況にある。  政府は、 酪農家の技術向上のため、 海外からの援助等を活用しつつ、 飼養管理 技術の普及向上に務めているが、 効果が得られるまでには、 長い期間が必要とみ られている。  牛乳・乳製品の消費が急増しているインドネシアでは、 酪農業は比較的有利な 業種であるとされている。 しかし、 安定した経営を行うためには、 飼養規模10頭 以上で、 1日1頭当り15キロの乳量が必要という見方もあり、 現状とのかい離が 大きくなっている。

酪農家の返済不能負債が増大


 第三に負債の問題がある。 これは、 上記の問題点とも密接に関連するが、 毎日、 乳代として安定した収入を上げられるにもかかわらず、 生産性が低く、 かつ、 経 営規模が小さいため、 一部の酪農家は経営資金債務の返済財源が確保できない状 況にある。 このため、 インドネシア協同組合・中小企業省は、 深刻化する酪農家 の負債問題に対応するべく、 省内に特別対策チームを設置し、 その解決に向けて 具体案の検討を始める意向を明らかにした。  ちなみに、 酪農家全体の負債額は、 3千億ルピー (約159億円)、 うち13%の4 百億ルピー (約21億円) が返済不能に陥っているとみられている。
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