◇絵でみる需給動向◇
豪州の牛肉輸出が長期に亘って振わない中にあって、 生体牛輸出は依然として 好調を極めている。 97年1〜4月の総輸出頭数は28万7千頭となり、 前年同期比 で39.4%の大幅な増加となった。 これを月別にみると、 4月が前年比50.3%増の 8万8千頭と月間最多頭数であったが、 豪州食肉畜産公社 (AMLC) の速報値によ ると、 5月は、 史上初めて10万頭を超えた。 生体牛輸出は、 90年代に入ってからは加速度的に増加しており、 96年の総輸出 頭数は前年比42%増の72万3千頭となった。 さらにAMLCの予測によると、 97年に は89万頭の輸出が見込まれており、 そのうち8〜9割はインドネシア、 フィリピ ンを中心とした東南アジア向けとなっている。 生体牛輸出の増大は、 現在では、 牛肉輸出の不調に苦慮する豪州肉牛業界にと って、 最も 「明るい」 材料となっており、 牛肉輸出回復に目覚ましい進展が見ら れない中で、 今後、 期待はますます大きくなっていくものと思われる。
こうした中、 以前から生体牛輸出の検疫条件等で交渉が行われていた豪州と中 国の間で合意が成立し、 近いうちに大規模な輸出が実現する見通しとなった。 中 国は目覚ましい経済成長に伴い牛肉の消費が急増しており、 素牛の供給源を豪州 に求めてきたものと思われる。 中国はその人口の多さから、 生体牛輸入が急速に 増大する可能性があり、 すでに最大6万頭規模に達するとの予想がある。 このた め、 豪州の肉牛産業に多大な利益を生み出すことが期待されている。 なお、 生体牛の輸出は、 豪州北部からの輸出が主体となっているが、 中国との 関係では、 交渉が難航した原因の一つに豪州北部に存在するブルータング病が挙 げられていることから、 一部は南部からも輸出されるものと考えられる。 また、 近年では、 輸出向け生体牛の供給地は、 主力である東南アジアや中東向けに適し た熱帯性品種が主流の豪州北部に限られていたが、 牛の品種に対するニーズが多 様な中国市場の登場により、 北部以外の肉牛生産者にも、 広く利益をもたらすも のと期待が寄せられている。
しかしながら、 一方では、 生体牛輸出の一層の急拡大は、 豪州の牛肉加工業者 の肉牛調達に影響を与えるのでは、 との声も上がっている。 現地報道によれば、 伝統的な素牛輸出地域であるクイーンズランド州北部では、 近年の生体牛輸出の急速な増大に伴うと畜用肉牛の不足によって、 4ヶ所の牛肉 加工業者が操業を停止するというケースが起きている。 そうした状況下で、 中国 向けも含めて、 さらに輸出が加速されるとすれば、 豪州牛肉産業全体の肉牛調達 に支障が出るのでは、 との懸念も指摘されるところとなっている。
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