EUの牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○イギリスの牛肉消費動向



● 牛肉消費量は対前年比16.4%の減少


 イギリス食肉家畜委員会 (MLC) によれは、 96年のイギリスの牛肉消費量は、対
前年比16.4%減の74万8千トン (枝肉ベース) と大幅な減少となった。 その原因
は、 何と言っても昨年3月に発生した牛海綿状脳症 (BSE) 問題によって、消費者
の牛肉に対する信頼が大きく損なわれたことが挙げられる。 特に、BSE問題がマス
コミに大きく取り上げられた96年上半期は、 前年同期比22.8%減ととりわけ大き
く減少し、 また、 下半期も9.6%減と上半期の落ち込みほどではないものの、後遺
症を残す結果となった。 

 一方、 豚肉および鶏肉の消費量は、 牛肉の代替需要によって、それぞれ2.7%増
の124万4千トン、 3.9%増の164万3千トンとなった。 

食肉の消費動向

 (注)数値は枝肉ベース

● 特に敬遠された低級部位


 一方、 消費者の牛肉購入量を用途別にみると、 ステーキ用が3.2%減、ロースト
ビーフ用が7.8%減と高級部位の減少が小さかったのに対し、 挽き肉が26.5%減、 
シチュー用が14.4%減と低級部位の減少が大きかった。 特に、 牛肉購入量全体の
4割近くを占める挽き肉の落ち込みが、 全体の減少に大きく影響している。 この
ように、 用途別の減少率に大きな格差を生じたのは、 低級部位は食材として他の
食肉等への代替が容易であったのに対し、 高級部位はローストビーフなど伝統的
な牛肉料理であることから代替が困難であったためと考えられる。 

牛肉購入量の推移

 (注)数値は販売重量ベース

● 都市部の牛肉購入に大きく影響


 また、 牛肉消費を地域別にみると、 最も減少率が高かったのは、 首都ロンドン
の21.3%減であったのに対し、最も低かったのはスコットランドの5.1%減であっ
た。 全体的な傾向としては、 ロンドンに代表される都市部の消費者は、BSE問題発
生によって牛肉購入を控える傾向が強かったのに対し、 スコットランドのような
農村部では、 大きな影響を受けることがなかった。 これは、 消費者の牛肉に対す
る不安感が、 マスコミ報道など情報量の多い都市部ほど、 強かったためと考えら
れる。 

 このように、 イギリスの牛肉産業にとっては、 消費者の牛肉に対する信頼回復
という新たな課題に加えて、 他の食肉等に押されての長期低落傾向をいかに食い
止めるかなどの問題を抱えており、 その解決すべき課題は多い。 

● 市況対策の面では介入在庫がいずれ重荷に


 そうした中で、 先ごろ同国の大手ハンバーガーチェーンが、 相次いで国産牛肉
によるハンバーガー原料の調達を再開することを決定するなど牛肉業界にとって
明るいニュースも出ている。 しかしながら、 一方では、 市況対策として行われた
介入買入れによる在庫が、 97年4月末現在で6万6千トン (EU全体では43万8千
トン (枝肉ベースでは50万9千トン)) に達しており、いずれはこれらを放出せざ
るを得ないことから、 市況対策の面では手放しの喜びというまでは、 いかないよ
うだ。 

元のページに戻る