豚コレラの発生が依然として続く (オランダ)




● 6月中旬までに53万頭をと畜処分

 オランダでは、 豚コレラが終息しておらず、 主要養豚地帯である南部を中心に
依然として発生が見られている。 その発生件数は、 今年2月の初発生以来、 6月
末までの間に、 合計321件となった。 豚コレラ発生農場では、全飼養豚を直ちにと
畜処分する措置が取られていることから、 同国ではこれまでに53万頭の豚が処分
された。 また、 発生農場を中心とする最低半径10kmの範囲は、 監視地域に指定さ
れ、 豚の移動は禁止される。 一定期間を経た後には、 食肉処理場への搬入が認め
られるものの、 当該豚肉の流通に当たっては加熱処理が必要となる。 

 なお、 同国の豚の人工授精の普及率は7割以上であるが、 ここまで発生が拡大
した原因の一つとして、 人工受精用精液による伝播の可能性も否定されていない。 

● 5月中旬までに約138万頭を介入買い上げ

 EU委員会は、 この防疫措置による生産者等への影響や、 出荷停滞による飼育密
度の上昇といった動物愛護上の問題から、 介入買い上げ (EUの財政負担7割) を
行っているが、 その買い上げ上限頭数は、 発生の増加に伴って当初の約百万頭か
ら約5百万頭 (子豚を含む) に引き上げられた。 買い上げられた豚は食用以外の
用途向けに加工処理されるが、 仮に約5百万頭の豚がすべて処分された場合、 成
豚枝肉に換算すると、 約40万トンの豚肉が処分されることとなる。 なお、 5月中
旬までのこの介入による買い上げ実績は、 約138万頭となっている。 また、オラン
ダ政府は、 6月上旬までで、 これまでの豚コレラ対策に要した経費を、 7億ギル
ダー (約440億円) と見積もっている。 

 なお、 オランダ以外の豚コレラの発生については、 6月上旬の段階でドイツ45
件、 イタリア18件、 スペイン45件となっている。 また、 6月末には、 ベルギーで
もその発生が確認され、 現在のところ、 6件となっている。 しかしながら、 ドイ
ツではその発生が終息したことから、 EU委員会の決定により、 かつての汚染地域
からの豚肉の輸出禁止等の制限が6月19日付けで解除された。 

● 政府はワクチン使用に望み

 現在、 EUにおける豚コレラ防疫措置の核となるものは、 発生農場でのと畜処分
と生豚・豚肉の移動禁止であり、 ワクチンの使用は認められていない。 しかし、 
豚コレラの発生が長期化する中で、 オランダ政府は、 現在、 ワクチンの使用に望
みをかけていると伝えられている。 また、 オランダおよびドイツの製薬メーカー
が野外ウイルスによる抗体とワクチン抗体を識別できるマーカーを持ったワクチ
ンの試験を準備しているとも伝えられている。 しかしながら、 ワクチンを使用す
る場合、 域外輸出に影響が出ることから、 デンマークなど輸出依存度の高い国か
らの反対が予想される。 

豚の介入買い上げ状況

 注:( )内は子豚の頭数で内数
   実数は5月中旬時点


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