USDA、 州法に基づく食肉検査制度の見直しを開始



● 州の検査制度を巡る不満の高まりが背景

 米農務省 (USDA) は、 6月中旬、 食肉および消費者団体の代表者を集め、 食肉 の検査制度の実態報告等に関する公聴会を開催した。  これは、 議会から、 州法に基づく食肉検査制度 (以下、 「州の検査制度」という) に関する報告を求められていたことに対応するための措置である。 現在、 州の検 査制度の下で操業する一部の小規模加工業者からは、 その衛生基準の一部が連邦 規則以上に厳しいことから、 州の検査による食肉に適応されている流通上の制約 の撤廃を求める訴訟を準備するなど、 検査制度やその効力を巡って不満の声が上 がっている。 このことが、 USDAが議会から報告を求められた背景となった。

● 州の検査制度は26州で実施

 米国の食肉 (鶏肉を含む) の検査制度においては、 連邦法に基づく検査制度の ほかに、 州の検査制度が存在するケースがあり、 その場合には、 どちらの検査制 度に従うかは、 食肉処理業者が自由に選択できることになっている。 現在、 州の 検査制度がある州は26州 (うち鶏肉を対象としていないものは2州) で、 中小規 模のものを中心に、 約2千8百の食肉工場が、 州の検査制度を選択している。 こ れを州別に見ると、 テキサス州が346と最も多く、 次いでイリノイ州が330、 ウィ スコンシン州が278、 オハイオ州が259となっている。  なお、 USDAは、 州の検査制度により検査を受けたものは、 流通している食肉製 品全体の7%強を占めると推測している。

● 連邦検査への移行はコスト高が障害に

 州法に基づく食肉の検査基準は、 連邦規則により、 基本的に連邦と同等以上の 水準にするよう規定されている。 しかしながら、 州法に基づく検査を受けた製品 は、 州内のみで流通できると規定されていることから、 輸出はもちろんのこと、 州境を越える流通についても禁止されている。  州の検査制度を選択している業者が、 広域流通が可能になる連邦法に基づく検 査制度に容易に移行できないのは、 連邦法の規準に合わせて、 配水管など加工場 の周囲の設備改善が必要となり、 そのコストがかかるためである。 また、 連邦の 検査制度では、 検査官の超過勤務手当分が受益者負担となっていることから、 中 小の加工場にとっては、 さらに、 吸収困難な負担が増大するという問題を生じて いることも、 大きな要素である。

● HACCP適用も今後の調整課題

 実態報告の次のステップである、 食肉検査規則の改正等に係る公聴会は、 7月 にも開催されることとなっているが、 連邦の検査制度については、 今後、 危害分 析重要管理点監視制度 (HACCP) の適用を控えていることもあり、その面において も、 州の検査制度との調和をいかに図るかが注目されている。
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