米国の牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○生体牛の輸出入を巡る情勢


● 年間200万頭の生体牛を輸入

 米国への輸入生体牛の供給は、 そのほとんどが、 国境を接しているカナダとメ
キシコから行われている。 生体牛の輸入頭数は、 10年前には120万頭程度で
あったが、 年々増加し、 90年からは年間200万頭前後に達している。 

 ただし、 97年に入ってからは、 カナダからの輸入減少によって全体的に減少
しており、 97年1〜7月期では、 112万4千頭と、 前年同期を6.1%下回
った。 

◇図:生体牛の輸出入頭数◇


● カナダからは減少、 メキシコからは増加

 97年1〜7月期の輸入実績を供給国別に見ると、 カナダが前年同期を16.
6%下回る80万9千頭となったのに対して、 メキシコは前年同期を39.3%
上回る31万4千頭となった。 これは、 カナダについては、 同国内でのと畜・加
工能力が向上したことにより輸出に仕向ける頭数が減少したこと、 また、 メキシ
コについては、 米国の肥育素牛価格の上昇により取引きが活発化したことによる
ものである。 

 なお、 輸入生体牛のタイプとしては、 カナダからのものの9割は、 俗に 「と場
直行牛」 といわれるパッカーの処理場へ直接搬入される肥育牛であるのに対して、 
メキシコからのもののほとんどは、 主にテキサス州などのフィードロット向け肥
育素牛である。 


● 米・加貿易バランスでは、 加が優位

 次に、 米国とカナダの間の生体牛の貿易バランスについてみると、 カナダ側の
大幅な 「出超」 となっている。 これは、 基本的には、 価格差や食肉産業の規模の
違いといったマクロ的要因によるものであるが、 カナダへ輸出する場合の検疫手
数料が割高であることも要因であるといわれている。 これに対し、 米国の生産者
団体は、 貿易障害であるとして、 強い不満の声を挙げていた。 ちなみに、 米国か
らの輸出実績は、 96年が4万頭、 また97年1〜7月期は2万頭と、 いずれも、 
カナダからの輸入頭数に比べて、 非常に少ないものとなっている。 


● 米・加間で検疫条件緩和に合意

 このことから、 両国政府は協議を重ね、 10月末には、 生体牛に関する検疫条
件を緩和することを規定した、  「北西部パイロット・プロジェクト」 に合意した。 
この事業は、 2年の期間に限定したもので、 その合意内容は、 (1)米国のワシン
トン州およびモンタナ州からカナダのアルバータ州の指定フィードロットへの肥
育素牛用の輸出については、 特定の伝染病 (アナプラズマ病、 ブルータング病、 
ブルセラ病および牛結核) に係る検疫を免除すること、 (2)米農務省動植物検査
局(USDA・APHIS) が、 カナダをブルセラ病および牛結核非発生地域と認定するこ
とにより、 カナダからの輸入については、 通常の検疫を免除すること、 (3)ワシ
ントン州およびモンタナ州は、 輸入生体牛に課していたブルセラ病のワクチン接
種を免除すること、 となっている。 


● 生体牛輸出の拡大を期待

 グリックマン農務長官は、 今回の合意内容を高く評価しており、 カナダ政府に
対しては、 今後、 この事業の対象地域の拡大を求めるとしている。 

 また、 モンタナ州立大学の試算では、 モンタナ州だけでも27万頭の生体牛輸
出が可能になると見込んでおり、 生産者は今後カナダへの生体牛輸出が拡大する
ものと期待している。 



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