米国の鶏肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○ブロイラーの生産見通し


● 増産基調が続くブロイラー生産

 米農務省 (USDA) によると、 97年10月のブロイラー生産量 (可食重量ベー
ス、 骨付き) は、 前年同月を4. 6%上回る113万4千トンとなった。 また、 
97年1月から10月までの累計でも、 前年同期を3. 1%上回る2, 274
万6千トンとなった。 

 ブロイラー生産は、 過去20年来拡大基調が続いている。 97年に入ってから
は、 寒波などの影響を受けて前年水準を下回った月もあったが、 10月までの累
計では、 依然として前年同期を上回った。 


● 良好な収益が増産持続の要因

 増産が持続している要因としては、 ブロイラー生産において良好な収益状態が
続いていることが挙げられる。 最近の収益動向を見ると、 全体の約4割を占める
最大のロシア向けが、 96年3月に衛生問題が原因で一時輸出停止となったこと
から、 その純損益 (加工業者段階、 以下同じ) は赤字に転落したが、 その後は、 
輸出再開とともに黒字経営に転換している。 

 さらに、 97年1月から10月までの動向についてみると、 月間平均純利益は、 
6.8セント/ポンドとなっており、 前年同期に比べると53%と大幅な増益と
なっている。 これは、 生産コストの大部分を占める飼料価格が、 昨年秋以降、 大
幅に下落したことから損益分岐点が低下し、 収益性が改善したことによるものと
みられる。 

◇図1:ブロイラー生産の純利益の推移◇


● USDA、 今後も生産増を予測

 USDAは、 今後もこうした増産傾向はしばらく続くとみており、 97年第4四半
期の生産は、 前年同期に比べ5.7%増になると見込んでいる。 その結果、 97
年統計では、 前年を4. 0%上回る1, 242万9千トンとなり、 また、 98
年についても、 97年をさらに6. 6%上回る1, 324万5千トン程度にな
るものと予測している。 


● 供給過剰と輸出停滞が懸念要因

 しかしながら、 ブロイラーの卸売価格をみると、 97年5月以降、 軟化傾向が
見られる。 97年1月から10月までの丸どり卸売価格 (中抜き、 12都市平均) 
は、 前年同月を1.3%下回る60セント/ポンド (約163円/kg) となった。 
また、 品目別で見ると、 もも肉の下落率が高くなっており、 97年1月から10
月までのむね肉平均価格 (北東部、 ボンレス) は、 前年を1.7%下回る176
セント/ポンドであったのに対し、 もも肉平均価格 (北東部、 ホール) は、 前年
同月を13.6%と大きく下回る49セント/ポンドであった。 これらの卸売価
格の軟化傾向は、 生産拡大による供給過剰が表面化したものと考えられるが、 輸
出の主要品目であるもも肉については、 年初来、 中国 (香港経由を含む) 向けが
不振となっていることが影響していると考えられる。 

◇図2:ブロイラー卸売価格の推移◇

 業界関係者の間では、 価格低迷がこのまま続けば収益の悪化が懸念されること
から、 予想される生産拡大傾向の行方を注視している。 今後、 最大需要期である
年末にかけて、 国内外の需要をどこまで回復することができるか注目されている。 



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