世界の飼料穀物の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○エルニーニョの影響を懸念


● 今年は過去最大規模に発達

 我が国の気象庁は、 先般、 太平洋東部赤道域の海面水温が平年比プラス3.3
度となり、 エルニーニョ現象が、 過去最大であった82〜83年と等しい規模に
なったとの調査結果を公表した。 同現象は、 通常、 12月のクリスマス頃に発生
することが多く、 このため、 スペイン語で 「神の子」 を意味する名称で呼ばれて
いる。 しかし、 今年は、 3月から早くも水温上昇が始まり、 その後、 平年との温
度差が漸次拡大した。 同現象は、 間もなくピークを超えるとの見方が強いが、 少
なくとも、 今冬いっぱいは平年を上回る海水温が続くと見られており、 世界各地
の気象や農業生産への影響が懸念されている。 


● 大豆需給に影響か

 エルニーニョの農業生産への影響は、 通常、 まず、 南半球に現れる。 今年も、 
ブラジル、 アルゼンチンなどで大豆などの生産に影響が及ぶことが懸念されてお
り、 米農務省 (USDA) や民間需給予測会社が生産予測を下方修正したこともあっ
て、 供給不安が高まりつつある。 このため、 11月に入ると、 米国シカゴ商品取
引所 (CBoT) では、 大豆先物価格が急騰した (11月10日現在で690〜74
0セント/ブッシェル) 。 また、 大豆の需給がひっ迫すると、 トウモロコシから
大豆への作付け転換も予想されるため、 トウモロコシの先物取引価格も徐々に上
昇しており (同279から289セント/ブッシェル) 、 最大生産国である米国
の在庫水準が依然として低いこともあって、 予断を許さない展開となっている。 


● 世界の飼料穀物需要が増加

 ちなみに、 このように需給不安が高まる背景としては、 世界的な規模で飼料穀
物の需要が増加していることが挙げられる。 USDAが10月に公表した最近の予測
によると、 97/98年度の世界の飼料穀物需要 (飼料用途) は、 97/98年
度には601百万トンに達し、 前年度に比べ3.5%の (20百万トン) の増加、 
前々年度に比べると9.7% (53百万トン) の増加になることが見込まれてい
る。 これは、 飼料穀物の国際価格が、 ここしばらく比較的低水準で推移したこと
から、 世界的規模で家畜の飼養が増加しているためと思われる。 


● 中国の需給動向に注目

 また、 今後の世界の穀物需給動向を見るうえで、 中国の動向に注目が集まって
いる。 同国政府の発表によると、 同国は、 本年1〜9月にかけて、 389万トン
のトウモロコシを輸出した。 これは、 前年同期の実績 (15万トン) から見ると
大幅な増加となっている。 一方、 USDAの推定によれば、 中国の97/98年度の
トウモロコシ生産量は、 前年度比17. 6% (22. 5百万トン) 減の105
百万トンにとどまると見込まれている。 このため、 USDAは、 中国のトウモロコシ
在庫が、 97/98年度には21.5百万トンとなり、 前年度末 (41百万トン) 
に比べ、 ほぼ半減すると見込んでいる。 同国の穀物需給動向は国際相場に多大な
影響を及ぼすことから、 今後の展開が注目を集めている。

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