◇絵でみる需給動向◇
ドイツ市場価格情報センター(ZMP) によれば、 96年のバター輸出量 (域内輸 出を含む) は、 49万4千トン (対前年比14.6%減) とかなり大きく減少し た。 これは、 比較のベースとなる95年の輸出量が、 国際需給の逼迫による価格 上昇に刺激されて、 高水準であったためである。 ちなみに、 96年のバター輸出 量を2年前と比較すると、 2. 5%上回る水準となっている。
次に、 96年の輸出量を国別にみると、 アイルランドが対前年比3.4%増の 12万5千トンとなり、 EU最大のバター輸出国となった。 これに対して、 オラン ダは、 対前年比15.7%減の11万トンと昨年までのトップの座をアイルラン ドに譲ることとなった。 これは、 主にロシア向け輸出の減少が影響したものとみ られる。 なお、 EU全体の輸出量のうち、 両国の占める割合は、 47.6%とほぼ その半分を占めている。 さらに、 両国のバター生産に占める輸出の割合はアイル ランドが8割強、 オランダが6割弱と高く、 輸出依存型の産業構造となっている。 バターの輸出国別の輸出量(域内輸出を含む) 資料:ZMP他 (注) 1 合計欄の92〜94年はEU12カ国、95〜96年はEU15カ国。なお、95年 にEUに新たに加盟した3カ国の輸出量は2〜4千トン。 2 96年の数値は暫定値、カッコ内は対前年比である。
一方、 バター輸出量を域内/域外別に見ると、 EU域内向けが、 概ね減少傾向に あるのに対し、 域外向けは、 その年の国際需給によって大きな変動を見せている。 96年のそれぞれのシェアは、 域内向けの7割強に対し、 域外向けは3割弱を占 めており、 ここ5年間では、 域外向けのシェアが高まる傾向にある。 さらに、 域外向け輸出量を国別にみると、 ロシアが最大の輸出先となっている が、 年ごとの変動はかなり大きなものになっている。 例えば、 95年は、 域外輸 出の約半分を占める7万5千トンに達したものの、 96年は、 一転して2万2千 トンと対前年比3割弱のレベルにとどまった。 これは、 ロシアの経済状態が不安 定であったことに加えて、 輸入業者が当用買いに終始する傾向にあったことや、 買い付けが外貨事情に左右されやすいことから生じたものである。 ロシアは、 市 場規模が大きいだけに、 近年のEUのバター需給は、 その動向に強く影響される結 果となっている。 EUからの仕向け先別のバター輸出量 資料 ZMP他 (注) 前表と同様
97年に入ってからの域外輸出は、 再び急増しており、 97年の上半期は、 前 年同期に比べ2.7倍の約13万トンに達している。 これは、 ロシア経済に好転 の兆しがみられる中、 新富裕層の出現もあって、 需要の回復傾向が明らかとなる 一方で、 生乳生産の減少が続いていることから供給不足が深刻化していることを 反映したものである。 さらに、 今後とも同国の生乳生産が急速に回復することは ないとみられていることから、 しばらくは、 旺盛な購入需要が続くものと予想さ れている。 このような状況に加え、 EUのバター生産量は、 前年を下回る水準で推移してお り、 かつ、 9月下旬の民間在庫量は、 前年同期を5万9千トンも下回っているこ とから、 EUのバター需給は逼迫の度合いを強めている。 その結果、 ドイツ、 フラ ンス、 オランダなど主要国の国内価格は、 89年以来の高値になっている。
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