EUの豚肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○主要国の飼養頭数は対照的な結果に−97年8月期センサス−



● ドイツ、 フランスは引き続き増加、 オランダは大幅減少

 97年8月期のEUの豚飼養に関するセンサス (年3回実施) によると、 主要豚
肉生産国の総飼養頭数は、 ドイツおよびフランスで、 前回 (97年4月期) 、 前
々回 (96年12月期) から連続して増加を記録したのに対して、 オランダは大
幅な減少、 デンマークはわずかな減少となった。 

 このうち、 EU最大の豚肉生産国であるドイツの総飼養頭数は、 主に旧東ドイツ
地域での飼養頭数の増加が貢献し、 対前年同期比2.8%増となった。 また、 第
3位の生産国であるフランスは、 同1. 1%増となった。 

 これに対して、 EU最大の生産豚輸出国であるオランダでは、 今年春以来の豚コ
レラの影響が長期化し、 その殺処分による撲滅対策が取られたことから、 対前年
同期比16.1%減と、 大幅な減少になった。 また、 最大の豚肉輸出国であるデ
ンマークは、 0. 1%減となった。 

97年8月期主要国別豚センサス

 資料:イギリス食肉家畜委員会
    「European Market Survey」


● 豚コレラが各国の飼養動向に影響

 今回のセンサスで、 ドイツやフランスなどの総飼養頭数が増加した原因は、 オ
ランダからの生体豚の輸入が減少した中で、 夏季の国内豚肉需要が好調であった
ため、 豚肉価格が堅調に推移したことにある。 その結果、 肉豚生産者の増頭意欲
を刺激することとなった。 

 なお、 フランスでは、 オランダからの生体豚輸出減少分を一部補う形で、 第2
位の生産国であるスペインやベルギーなどへの生体豚輸出が増加し、 このことが、 
肉豚生産者の増頭意欲をさらに促すこととなった。 ちなみに、 97年上半期の同
国の生体豚輸出は、 対前年同期比73.6%増の約16万5千頭と大幅な増加と
なった。 

 一方、 オランダでは、 豚コレラの発生が依然として続いており、 生体豚の介入
買上げなどが行われている。 10月5日現在の買上げ上限頭数は、 882万5千
頭 (子豚を含む) にまで引き上げられ、 その買上げ実績は約746万頭となった。 
なお、 同国の政府が飼養頭数の縮小を計画している中で、 国内養豚農家の一部は、 
旧東ドイツ地域に進出を図っていると報告されている。 

 また、 デンマークは、 主にドイツ向けに生体豚輸出 (生体で同国はオランダに
次ぐ輸出国) が急増し、 肥育豚頭数が減少したため、 総飼養頭数が減少すること
となった。 同国の生体豚輸出頭数は、 1月から8月までで、 既に72万7千頭と、 
昨年の輸出実績 (69万5千頭) を上回った。 この結果、 好調な豚肉輸出と相ま
って、 夏季の同国の肉豚価格は堅調に推移した。 


● オランダを除き肉豚供給は依然として増加傾向

 一方、 繁殖用雌豚の飼養頭数については、 これまでの好調な価格の下で、 多く
の国で増加傾向にあり、 このことは、 今後も、 オランダ以外の国では肉豚供給の
増加傾向が続くことを示唆している。 ちなみに、 繁殖用雌豚の増加率は、 ドイツ
やフランスがそれぞれ、 2. 4%増、 1. 7%増であったのに対して、 輸出が
好調で意欲が高まっているデンマークは、 6. 1%増と両国を大幅に上回った。 
ドイツ市場価格情報センターは、 こうしたことから、 域内の豚肉生産量が98年
の第2四半期以降、 増加に転じると予測している。 

 しかしながら、 その一方で、 10月以降、 各国の豚肉価格はおおむね値下がり
傾向にあり、 今後、 飼養頭数の拡大傾向が続く場合、 豚肉市況がさらに軟化する
ことを懸念する声が、 一部業界関係者の間から出始めている。 



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