◇絵でみる需給動向◇
米国の生体豚輸入は、 近年、 豚飼養頭図の減少などの影響から拡大しているが、 輸入先についてみると、 隣接するカナダがほぼ100%を占めている。 カナダか らの生体豚輸入の約7割は、 と畜用の肥育豚であるが、 子豚も全体の約3割を占 めている。 近年の輸入実績は、 95年が前年を91%と大きく上回る174万7 千頭、 また96年は前年を59%上回る277万9千頭となっている。 97年に 入ってからも増加傾向は続いており、 1月から7月までの輸入頭数は177万頭 となり、 前年同期に比べて17%増となっている。 ◇図:カナダからの生体豚輸入の推移◇
カナダからの生体豚輸入が拡大した背景としては、 輸送費を除いた価格で比較 すると、 米国では、 カナダよりも1頭当たり約6ドル高く取引きされており、 カ ナダの生産者にとって、 米国市場は高値で販売できる魅力的な存在となっている ことが挙げられる。 また、 カナダでは、 近年、 肉豚流通が自由化されたことによ り、 生産者は特定の団体を通さずに米国の食肉パッカー等と直接取引きが可能と なったことも輸出の刺激材料となっている。
カナダ国内では、 豚の輸出増加が進むにつれて食肉パッカーの豚処理頭数が減 少し、 最近ではその稼働率が50〜60%になっているとされている。 また、 カ ナダの食肉パッカーは工場の近代化を進めつつあるが、 小規模なパッカーが多く かつ人件費も高いことから、 それらの要因が生産コストの上昇を招いているとさ れている。 このため、 米国パッカーとの競争力を確保するためには、 まずパッカ ーの再編・整備が不可欠となっているが、 現実にはそれらが進行している様子は みられない。 カナダ食肉協議会は、 こうした現状を受けて、 米国への生体豚の輸 出により、 と畜部門でおよそ3,500人の雇用が奪われているとして、 対米輸 出が急増していることについて遺憾の意を表明している。
米国の豚飼養頭数は、 97年6月以降、 前年水準を上回って推移しているもの の、 ノースカロライナ州などの主要豚生産州で環境規制を強化する動きが見られ ることから、 近年の肉豚生産をリードしてきた大規模経営に制限が加えられつつ ある。 こうした養豚業を取り巻く事情の変化により、 カナダからの生産豚輸入は、 引き続き増加傾向で推移すると関係者はみている。
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