EU委員会が製造物責任の強化を提案 (EU)




● 一次農産物にも強制適用へ

 EU委員会は、 10月2日、 農産物の無過失製造物賠償責任に関する規則改正に
ついての提案を行った。 これは、 製品の欠陥が原因で消費者が損害を受けた場合、 
生産者、 製造業者または輸入者 (以下 「生産者等」 ) が、 被害者に対して賠償責
任を負うというものであるが、 これまで、 農産物では加工品のみに適用されてい
たものを、 肉、 牛乳、 穀物などの一次農産物についても、 強制適用するという内
容である。 

 今回、 この提案が農相理事会で採択されると、 EU指令としてすべての加盟国に
おいて既存国内法の改正措置が行われる。 これにより、 一次農産物についても、 
加工品と同様に、 EU全域で、 生産者等が製品の欠陥により生じた損害を賠償しな
ければならなくなるため、 一般農民が補償問題に直面するケースが出てくること
が予想される。 


● 食品の安全面における消費者保護の強化が背景

 今回の提案は、 欧州議会の要請により行われたものであるが、 その背景には、 
牛海綿状脳症(BSE) の発生などで消費者の食品の安全性に対する関心が一層高ま
っていることがある。 また、 EU委員会においても、 この規則改正により、 食品の
安全面における消費者保護を強化するという狙いがある。 

 なお、 76年に、 現行のEUにおける製造物責任に関する規則が初めて提案され
た際、 一次農産物についても、 すべての加盟国で強制適用の対象とすることが提
案された。 しかしながら、 その後の審議過程における欧州議会の反対などにより、 
85年に定められたEC指令(85/374EEC) で、 その取扱いが各国の自主的裁
量に委ねられたという経緯がある。 その結果、 一次農産物を無過失製造物責任の
対象とした国は、 ギリシャ、 ルクセンブルク、 スウェーデンおよびフィンランド
の4カ国にとどまっていた。 


● EU指令として成立するまでには多くの課題

 EU委員会は、 今回の規則改正提案について、 99年1月までにすべての加盟国
で法的手続きを完了し、 実施すべきことを求めている。 しかしながら、 生産者団
体は、 今回の提案に対して、 一次農産物の場合は、 その欠陥の多くが、 気象条件
の変化など、 生産者では対処の方法がない環境的な要因により発生するため、 無
過失製造物責任による厳しい責任追求は不公正だと反発している。 

 また、 今後提案の修正を行うことが検討されることや、 採択に当たっては、 農
相理事会および欧州議会の共同採択を得ることが必要となることなどから、 今回
の提案がEU指令として成立するまでには、 多くの紆余曲折が予想される。 



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