EU委員会が劣悪な家畜輸送における状況を報告 (EU)




● 依然として長時間輸送などが横行

 EU委員会は、 10月6日、 車輌による家畜輸送規則に照らした家畜輸送状況の
実態に関する報告書をEU議会に提出した。 この報告書は、 EU委員会が今年6月に
提案した同輸送規則改正の審議に絡むもので、 現行規則に違反した長時間輸送に
よる家畜の疲弊状況が多数取り上げられており、 劣悪な環境下での家畜輸送が依
然として行われている実態を浮き彫りにしている。 

 EU委員会は、 その要因として、 95年のEU指令に基づく、 同輸送規則に係る追
加規則の各加盟国法令への取り組みが不適切であることや、 特に、 5カ国におい
ては未だその規則改正自体が行われていないことを挙げている。 そうした状況下
で、 EU議会は、 (1) 最大輸送時間を8時間とすること、 (2) 家畜の輸送に関す
る技術面での詳細な規則を作成すること、 (3) 運送業者を承認する際に、徹底し
たチェックシステムを導入すること、 (4)飼養農場に近いと畜場で処理を行うこ
と、 (5)長距離輸送においては、 生体ではなく、 食肉に加工して輸送することを
検討すべきことなどを訴えている。 


● 近年、 動物愛護基準の強化を求める声が高まる

 この家畜の輸送に関するEU規則は、 車輌輸送中の家畜の保護を目的として、 9
1年のEU指令で定められた。 また、 近年の動物愛護基準強化を求める世論を背景
に、 95年のEU指令では、 追加規則として、 輸送時間の制限 (通常の輸送車輌で
の連続輸送時間は8時間以内) 、 輸送計画の作成、 獣医師による監視、 運転手の
登録および違反に対する制裁措置などの規定が盛り込まれ、 同規則の内容強化が
図られた。 さらに、 今年6月の改正提案では、 新たな追加規則として、 連続8時
間を超えて家畜を輸送する場合の車輌の設備要件等を盛り込むことが、 農相理事
会に提案されたところである。 


● 今後、 EU議会でも愛護問題の議論が活発化

 EU議会は、 この報告書を採択すると同時に、 さらに、 EU委員会に対して、 動物
愛護基準を満たした家畜から生産された食肉であることを示す品質ラベルを導入
することや、 長距離輸送においては鉄道、 船舶輸送を励行することなどの提案を
行った。 これに対して、 EU委員会は、 EU議会の提案と同様の認識を有しているこ
とを明らかにしている。 

 また、 これとは別に、 EU議会は、 10月下旬に、 家畜輸送規則に照らした家畜
輸送実態に関する報告書を取りまとめる予定とされており、 同議会では、 動物愛
護に関する議論が今後さらに活発化する見通しとなっている。 


● 年間約1, 400万頭の家畜を域内輸送

 なお、 今回のEU委員会の報告書によれば、 EUでは、 年間約1,400万頭の家
畜がEU域内で輸送されている。 また、 約100万頭のと畜向けなどの家畜が、 主
に中東などのEU域外に輸出されるのに対して、 230万頭以上の家畜がEU域外か
ら輸入されている。 



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