バーツ下落の影響により、 畜産農家の廃業が増加 (タイ)




● 通貨下落、 賃金抑制などの悪材料

 タイでは、 通貨危機により、 7月に為替相場制度が管理フロート制に移行した
が、 その結果、 同国の通貨バーツはUSドルに対して40%以上も下落した。 タイ
政府は、 国際通貨基金(IMF) の融資条件の1つであるインフレの抑制を達成する
ため、 飼料の原料となる大豆、 トウモロコシなどをはじめとする多くの品目の輸
入価格が上昇している中、 厳しい監視体制を取り、 国内の物価上昇を抑制してい
る。 

 また、 消費刺激要素として注目される1日当たりの最低賃金は、 来年1月1日
からは、 162バーツに改定されることに決められた。 同最低賃金の改定は、 バ
ーツ切り下げの影響による企業業績の低迷、 失業率の増加による労働の供給過剰
などを反映して、 今年に比べ金額で5バーツ増、 伸び率で3.2%増と低い伸び
となった。 

 このように、 生産コストの上昇を販売価格に転嫁できない状況や、 企業業績の
悪化に伴う賃金の抑制などは、 これまで順調に発展してきた同国の畜産業および
鶏肉など畜産物の消費拡大に悪影響を及ぼすものと強く懸念されている。 


● コスト上昇と販売価格低下の板ばさみ

 実際、 豚の主産地であるラジャブリ地区の養豚農家では、 生産コストが以前に
比べ3割程度上昇した。 しかし、 一時1kg当たり40バーツを超えていた豚肉の
卸売価格は、 今では36バーツ前後まで下落しており、 消費減退の影響が顕在化
し始めている。 一部には、 同卸売価格が、 年末までには30バーツまで下落する
のではないかとの悲観的な見方もある。 養豚農家は、 飼料販売業者から飼料代金
の支払いを迫られているため、 これまで100kgであった豚の出荷生体重を、 9
0から95kgに引き下げて資金の回収を早めているほか、 豚肉価格の相場を見な
がら、 子豚の仕入れを増減させるといった防御策を講じている。 

 また、 チョンブリ地区の養鶏農家についても同様で、 1kg当たりの生産コスト
は、 直近で27バーツ (昨年は、 約22バーツ) に上昇している。 これに対して、 
と体中抜き1kg当たりの卸売価格は、 25バーツ (昨年は、 約33バーツ) に下
落しており、 特に、 大型の個体が敬遠されている。 


● 畜産農家の廃業が増加

 こうした厳しい状況の中で、 営農を維持できずに廃業を余儀なくされる畜産農
家が増加している。 

 タイ飼料生産者協会は、 国産のトウモロコシ、 大豆などの相当な値上がりによ
る苦況などから、 飼料製造業者および畜産農家を救済するため、 飼料原料の無税
輸入割当て数量の大幅な拡大および国内産飼料原料の生産増大を図るための対策
を政府に要求している。 



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